02
―――桜の花びらが空を舞う。
自分はどれだけこの桜を見てきただろうか。
* * *
太陽が地面を照らしている。
驚くほどの晴天で、まるでこの縁談を祝福しているかの様だった。
舞姫はぎりっと扇を握り締める。
約束の時刻を既に過ぎているというのに相手方の男はいまだ姿を現さない。
一体どういうつもりなのだろうか。
それに、この場にいる誰もが先ほどから一言も発しないというのもおかしい気がする。
見合いは既に始まっている。
舞姫は父の顔をちらと伺う。
「・・・・・・っ!?」
・・・・・・何だというんだ。
父の顔を見て驚愕した。
まるで何も映していないような目。
よく見れば周りの者も皆同様だった。
不意に、雷が鳴り始め、雲行きが怪しくなってきた。
「・・・よねっ!?」
たまらなくなって思わず舞姫が叫ぶと何かが倒れる様な音がした。
「・・・・・・よねっ!!」
控えていたはずの女房が倒れている。
最初から罠とわかってはいたが何故こんな手の込んだ事をするのか舞姫には理解できなかった。
「一体・・・どうしたら・・・」
「―――同様しているようだな」
「だれ・・・っ!?」
不意に、向かい方から何者かがこちらに歩み寄ってくる姿が薄っすらと見えた。
外の荒れ模様のせいで室内は薄暗い。
ようやく目の前まで来て、その者の姿がはっきりと見えた。
黒い衣に黒い布で覆っている顔。
「・・・・・・あなた」
「舞姫よ。礼を言おう」
「なんですって・・・?」
こんな見ず知らずの輩に礼を言われる筋合いはない。
舞姫はキッと睨みつける。
「この顔に覚えは無いか?」
クッ、クッ、クッ・・・と笑うと目の前の男は顔を覆う黒い布をはずした。
「・・・・・・っ!?」
「―――やあ、久しぶりだね。私の舞姫」
「・・・・・あ・・・お・・・おにい・・・さま」
舞姫の顔が驚愕で歪む。
「せっかくの再開だけど、時間が惜しいんだ。君なら、協力してくれるよね?」
「あっ・・・うっ・・・」
何の前触れもなく首を絞められる。
「・・・は・・・話してっ!!・・・兄様を・・・返しなさいっ!!」
「クッ、クッ、クッ・・・、あはははは!!まだ抵抗するか!!」
「兄様の顔で下品な笑い方をするな・・・っ!!」
そう言うと懇親の力で相手を蹴りつける。
「くっ・・・がはっ・・・」
ようやく相手から解放されはしたが息が苦しい。
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