刀剣、乱舞
もし、BASARA世界で両足を切られても諦めることができなかったら、のIFになります。
グロ注意。
しかもお気に入りの刀剣が石切丸であるがためにヤンデレ化を考えることができず、刀剣の登場すらしていないです。
大阪城の一室で、私は飾られていた。
両足を太ももから切断された私に移動する方法なんて這いずる他になくて、その方法すらも煩わしい着物のせいで諦めざるを得なかった。
だから、飾られているという表現は正しい。
彼らの持ってくる美しくも煩わしい着物を着せられ、豪華な髪飾りで飾り付けられる。
私が背中を預けているこの座椅子だって、一流の職人が手懸けた素人目に見ても素晴らしいものだ。
私は飾り物。
だから、かれらに絶対に応えてなんてやるものか。
暇な時間を見つけては彼らは私に話しかけに来る。
だけども、両足をきられるまでの私のように返事をしてやる義理はない。
友達たちは助けた。
それから自分の身を守るために機嫌を損なうことなく対応してきて、結果がこれだ。
私は、もう自分の意思で歩くことができない。
そもそも、切られてたいして日にちが経っていないのだ。
じくじくと痛む切り口に涙を堪えるのに精一杯で、彼らの相手をしてやるほど余裕もない。
彼らは憎い、憎い私敵になったのだ、あの瞬間に。
ああ、でも、官兵衛さん。あのひとだけは、私の味方だったと思う。
自分の欲望を理性で抑えつけて、私のために最後まで半兵衛さんたちにやめるよう説得していた。
止めることができなかったけれども。
そんな、大阪城で飾られているとだけの私のもとに、小さな狐がやってきた。
歌舞伎化粧を施した、真っ白い狐だ。
音もなく私の目の前に姿を現した狐に思わず眼を瞬く。
「あなたの力が、必要です。新しい審神者様」
審神者、新しい審神者?
「私は2205年からやってきた、機械と呪術の合いの子の式神、こんのすけでございます。審神者様、どうか、わたくしたちに力を貸してはいただけませんか。そうしれば、ここから連れ出してさしあげます」
こんのすけ、と名乗ったかれの言葉に、私は大きな魅力を感じた。
ここから連れ出してくれる。
…逃げられる…?
「もちろん、そういうことでございます。彼奴らは絶対にあなたを見つけ出すことは叶いませぬ」
逃げられる。ここから!!
前のめりになりすぎて転倒してしまったが、私は数歩先のこんのすけへと手を伸ばす。
ここから、逃げられるというのなら。
どこでもいい、ここから連れ出して!
もうすこしで届く、その瞬間、襖が勢いよく開けられ、刑部たちが雪崩れ込んできた。
即座に私を抱えこんのすけと距離をとったのは三成さんだ。
半兵衛さんのもつ武器がこんのすけめがけて伸びて、こんのすけのいた畳を抉る。
こんのすけは半兵衛さんのこうげきを避けて、宙に浮かんでいた。
「審神者様。こんのすけはいつまでもお待ちしております」
そういって消えたこんのすけを恐ろしい形相で睨みつける彼らの眼がそのまま私に向く。
ああ、ちくしょう。
「結界を破って入ってきた物の怪に誑かされたか、真」
「刑部の言うとおりだ、真。何故すぐに私たちを呼ばなかった」
「ねぇ、真くん。あんな物の怪についていくなんて言わないよね?…ね?」
「ダメだ、ダメだ真。ワシらを置いていくつもりか。そんなこと、認めない。絶対に認めないぞ」
君たちに認めてもらう必要なんてないだろ。
「きみがそんな眼で俺たちを見るっていうのなら、そんな眼、いらなくないかい?」
前田慶次、お前だけは絶対に、許さない。
潰された私の片目。
両足を切られた痛みを忘れたわけじゃないけど、その痛みを遥かに上回った。
「見えなければ、いいんだ。ね、そうだろう真」
いきなり両目は死んでしまうかもしれないから、片目だけにしようね。
半兵衛さんのまったく有難くないその言葉に従って、私の片目は家康さんに潰された。
簡単だった。
かれの指がするりと私の眼窩へと入り込み、そのまま私の眼球を取り出していった。神経が引きずられて、耐えられない痛みに大きな悲鳴をあげる。
耐えられない、耐えられるものか、この痛みを!!!
「ひぅ、ううう!!わあああああ!わぁああああああ!!ふっ、ああああああああ!」
残った片目が溢れ続ける私の悲鳴と鳴き声に恍惚の表情をしてる彼らを写し続ける。
ふざけるな!ふざけるな!!!
涙が溢れて止まらない。
痛みも止まらない。
こいつらなんて、大嫌いだ!!
「こんのすけ!こんのすけぇ…!助けて!」
先ほどの白い狐の名前を呼べば、脳内に声が響く。
「審神者様の、言うとおりに」
その瞬間、私の体は宙を舞い、現れた白い狐が彼らから私を守るように前に出る。
彼らは威嚇するように毛を逆立てるこんのすけを見て、それぞれの武器を構えた。
それでもこんのすけは慌てることなくゆっくりと言霊を唱え始めた。
「あなた方は、もう審神者様を目視できない。
あなた方は、もう審神者様を思い出せない。
あなた方は、一生審神者様の面影を追い求めてやまない」
そして、そのまま私の方へ向き直り、私の腕の中へと飛び込んでくる。
「おかわいそうな審神者様。こんのすけがお守りいたしますからね」
私の未だ血の流れている頬に前足を添えて、確かにこんのすけは笑った。
あれ?
これこんのすけ夢かな?
先着で出して欲しい刀剣を募集してみたりします。
三振りほど。
prev|back|next