一部 気づかない










新しい兄弟ができてから、はやくも数日経過した。


私に対する対応に変化は無いものの、二人の仲は変わらず悪いようだ。



この間、食事の仕方がにいさまに比べて汚いとかなんとかで兄様の食事が下げられたり、メイド達がにいさまを褒め称えたりしているのは見たけど、その時の兄様達はどちらも瞳が怖い色に色づいている。

にいさまは兄様の居場所を取り上げてしまいたいのだろうか?

養子はどこまで許されるのか試したくなる衝動に付きまとわれていると聞いたことがあるし、父様がどこまで許してくれるのかの許容範囲を探しているのだろう。


「兄様、目、どうしたの?」


ある日帰ってきた兄様の片目が怪我してた。兄様の言いつけ通り大人しく本で埋まった自室で読書に勤しんで居るときのことだ。

「うん、ちょっとね」


にこりと笑う兄様の表情が普通に怖かったので曖昧に笑ってそれ以上追求するのはやめた。

二人とも根本的にはとても似てるんだからもっと仲良くすればいいのに。



「兄様、 にいさまのこと、嫌い?」

「そんなことないよ?ディオが僕のことを嫌いなだけさ!」








話は変わるが、兄様にはエリナという仲のよい女性ができたそうだ。
エリナといえば、兄様のお嫁さんになる人だ。 
本当は私に紹介するつもりだったらしいのだが、なんとにいさまが彼女になにかしてしまったらしく、話をするハズだったその日から何故か避けられまくったらしい。

真のお嫁さんになってもらう予定だったのに。


残念そうに呟いた兄様に思わずにいさまグッジョブと思ってしまった私は悪くない。悪くない。


「これだともしかしたら真は一生独身かもよ?」


でも、それなら僕らとずっと一緒にいれるね。


前言撤回。私結婚シタイデス。


兄様の瞳は見慣れた澱みを見せていて、思わず苦笑してしまった。
というか、ねぇ、そもそも長兄は君だよ結婚しなくていいの?結婚しよう?ジョースター家の為に、お父様のためにも。



あれからも兄様達はギスギスしながら日常を過ごしていた。
ことあるごとにチクリと嫌みを言い合ったり、小突き合ったり。




にいさま、私には優しいのになぁ。たまに新しい本とか買ってくれたり、美味しいお菓子を買って来てくれたりするのに。





こんこん、とドアがノックされて、にいさまが顔を出す。


「なぁ、真、いまいいかい?」

「大丈夫ですよ」


兄様は、にいさまが私の部屋を訪れる事を良く思っていて、むしろ誘えといわれた。なんなの兄様。


「君が居てくれれば良い方向に進む気がするんだ」


そう言って兄様は笑ったけれど。


兄様は私を通してどこを見ているのだろうかと不安になることもあるのだ。




「これ、君に渡しておこうと思って」

「わあ、素敵な栞ですね、嬉しいです!」


私の座っているベッドまで歩いてきたにいさまは細かい彫刻のされた一枚の栞を手渡してきた。
金色を主調とした二匹の小鳥が木の枝に止まっているものである。
金の中に生える赤と青は小鳥の瞳の色である。こんなに小さいのに、とても目立つ。


あ、この青色は…。

「にいさまの瞳みたいで綺麗ですね」

「…そうかい?ありがとう」


褒めた兄様の青い瞳から涙が零れるのは今更なので気にせず前ににいさまのくれた本に挟み込む。良い機会だから読み返そうかな。

ふとベッドに重みがかかって、にいさまが私の隣に座ったことが分かる。
にいさまの金髪が視界の隅に映った瞬間には、私はにいさまに抱きすくめられていた。

「真は、俺とジョジョの、どっちが好きなんだ?」


「私はジョナ兄様もディオにいさまも好きだよ」

「…そうか」


いつもの質問にいつも通りに返せばにいさまは口元だけで微笑む。

「にいさま、今日は一緒に寝ますか?」

腕の中からにいさまの顔を覗き込み訊ねた。

「ああ、そうだな。たまには」


おや珍しい。
いつもは遠慮するのに。


一旦寝間着に着替えてくると言ってにいさまは出て行ったので、本だらけのベッドを眠れるように片付ける。

あ、そうだ。
兄様にも言わなきゃ。





「ああ、別に大丈夫だよ!」

「デスヨネ」




初めて一緒のベッドで眠ったにいさまは、きめ細かいお肌にぷるぷるな唇でした。


にいさま女子力高いな。






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