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シェリーに支えられてクレアはなんとか立っている状態だった。

真の姿を見て微笑む二人に笑顔を返して、真はこちらに群がってきたゾンビたちを見る。
クレアは運転席へと足を引きずりながらも入っていき、“発進“という言葉を目にして瞳を輝かせた。
そんなクレアの姿にほっと一息をつきながらも、真は上の長シャツを脱いでクレアの左太股の止血を試みる。

「ありがとう」

「んん、気にしない」

真は笑ってシェリーの頭を撫でて立ち上がる。
女性が爆発までのカウントダウンをしているアナウンスが響いている。

ふと、彼女が年相応のお姉さんに見えた。


あとは、ボタンを押すだけ。けれども、なかなか押さない真にクレアが声をかけた。


「真…?どうかしたの?」

「レオン兄さんが来る」

「…本当に?」

クレアの疑うような声に真は窓の外を見て笑う。

「兄さん」

「え!」


そしてボタンを押した。
ゆっくりと電車が動き出し、ゾンビ達が景色の一部となる。
それらを見ながら、真は後両へのドアへと歩みを進めた。
カラカラ、とドアを開く音がしてレオンが姿を現す。
汚れてボロボロになった姿の中、彼の青い瞳が輝いていた。


真の頭を撫でて通り過ぎ、クレアの前に座り込む。クレアと抱き合い、お互いの無事を喜ぶ。

「…エイダは?アネ―――研究者は?」

クレアの質問に対するレオンを見た真とシェリーは、レオンが泣き出すのではないかと思った。それほどまでに彼の顔は暗かった。

「ダメだった。……おれは、ダメだった」

クレアの手がレオンの後頭部を撫で、レオンはクレアの肩口に顔をうずめた。
その姿を見た真は、不謹慎ながらも全力で喜んでいた。勿論、心の中でだが。

レオンはエイダを好きになったし、今現在だって、真ではなくクレアへと弱音を吐いて助けを求めていた。

よかった!よかった!

これでヤンデレに怯える日々とはおさらばだ!

エイダが生きているのはメタ知識で知っているし、とにかく、真は自身に向けられている好意ご一つ減ったことに全力で喜んでいた。


…その喜びが続く事はなかったが。




「俺はレオン・S・ケネディ」

「私、シェリー・バーキンよ」

自己紹介を交わすシェリーとレオンの間に真の姿があった。

「悪い子にはお仕置きだ、真」

「レオン兄さん、放れたこと謝るごめんなさい。でもあれ、不可抗力…」

「結果が全てだ」

そういう話し合いの結果レオンに抱き上げられた。
抵抗は出来るのだが、今のレオンは傷だらけなので諦めてそのまま大人しく腕の中におさまることにしたのだ。


電車に揺られながら、運転席の中に入っていた救急箱の中から手当てに必要な物を飛び出し、二人の手当てを行う。何分道具不足であるものの、クレアの左太股には消毒薬の後清潔なガーゼが巻かれている。

清潔な、水も手渡しそれらを飲んだところで一息ついた。



うとうとと微睡み始めた瞬間に、金属がきしむ音と共に車両が大きく揺れて、パサ、となにかが落ちる音がした。


ああ、まだ、終わっていなかった。



レオンが立ち上がり、三人に微笑みかける。

「クレアを見ててあげて。ちょっと、様子を見てくる」

こくりと頷いたのを見たレオンは手にショットガンを抱えて、そのまま歩いて行った。



しばらくしてから、ショットガンの大きな音がした。


「レオンを助けなきゃ…!」

「だめ!クレア、足怪我してる!」

「レオンもじっとしてろって言ったじゃない!」

立ち上がろうとするクレアを抑えつけて二人はレオンが無事に戻ってくることを祈った。







戻ってきたレオンは多少の傷が増えたものの、五体満足であった。手に持っていたショットガンには三発しか残っていなかったけれど。

先ほど巻いたばかりの包帯には赤く血が滲んでおり、真はレオンをそっと抱き締めてからシートに横になるように促す。
シェリーほ既に先程発見した毛布にクレアと共にくるまって安心したように眠りについている。
レオンの頭を腿に置き、レオンの身体に毛布をかけ、ごねるレオンが眠りにつくまでずっと彼の髪をすいていた。



暗闇を走っていた電車の窓が、赤く白く光る。


まるで、夜明けみたいね。


また暗闇になった世界を走る電車の中、くすくすと一人真は笑った。









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