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「ぷはっ!」
ようやく足のつくところへ流れついて、真は足を踏ん張って立つ。
「あぁ、もうきたないっ!」
口の中に入り込んだ汚水を吐きだして、濡れた髪の毛を撫でつけて整える。
「ぅう…」
レオンは平気だろうか。起こっていないだろうか。バットは手放してしまったために身を守るすべがない。
大きな音を立てながら水を分けて進んでいると、梯子が見えた。
その梯子にひっかって気絶している女の子も。
「大丈夫?!」
ぐったりと意識の何少女の頭を慌てて水面上へとひきあげる。
この少女がもし少女だったら、なんてことは考えもしなかったが、少々軽装つだったと反省する。
頭を起こした少女が水を吐き出し、目を瞬かせたので、ほ、と一息をつくと
「っ離して!」
「っわ!」
正気にもどった少女が真を突き飛ばす。また水の中へと大きな音を立てて水の中へと逆戻りするも、突き飛ばされた拍子に漏らした声に、相手が人間であることに気がついたのか、慌てて真に手を伸ばす。
「ごめんなさい。ゾンビかと思ったの、」
「ううん、ありがとう」
はしごに捕まりながら二人は自己紹介をかわす。
年が近いように見えたのだろう、少女はほっと息をついている。
「私、シェリーよ。シェリー・バーキン」
「私、真」
「この上にいけるかも。行ってみましょう」
はしごを見上げるシェリーにに真はこくりと頷いた。
シェリーは梯子に手をかけ足をかけ、交互に昇っていく。
それを下から見ていた真もゆっくりと登り始める。
先に上っていたシェリーが舌打ちをした。
「開かないわ」
そろりそろりと降りる羽目になり、冷たい水の中にまた身体が着水する。一度温まった身体が冷たい刺激に小さく震える。
シェリーには梯子に捕まったまま待機をするをするように声をかけたところで、ふと二人の耳に足音が聞こえてきた。
は、としたシェリーがはしごを叩く。
「すみません!すみません!助けてください!」
大きな音を立てればゾンビが来る可能性だってあったが、これを逃せば出口なんてわからないのだ。
水温と共にカンカンと金属を叩く高い音が響き渡り、それは上を歩いている人物にも聞こえたらしく、声が降ってきた。
「シェリー?シェリーね?!」
それは女性の声で、その声はシェリーの名前を呼び、シェリーもその声は聞き覚えがあったらしい。
「クレア!」
嬉しそうな声で女性の名前を呼ぶ。
梯子の先を塞いでいた蓋が開かれた。シェリーが上がり、そして続いて真も上がる。
シェリーとの再会を喜んでいた女性が真の姿に慌てて拳銃を構えた。驚いたシェリーが女性に声をかける。
「この子は真っていうのよ!さっき出会ったの!」
「私真。まだ人間だよ」
くすくすと笑って真は右手を差し出す。
クレアも恥ずかしそうに笑って、その握手に応じた。
濡れた身体をそのままにしておくと風邪をひいてしまう可能姿勢があるが、身体を拭くためのものがそうホイホイ落ちているはずもなく、自然乾燥へと落ち着いた。
びしょぬれのまま隣を歩く少女二人にクレアが不安げな顔をしているものの、やはりタオルなんてものは見つからず、そのまま目的地へと向かうことになった。
戦闘を用心深く歩くクレアが思い出したように真へと顔を向ける。
「あなた、もしかしてレオンと知り合い?」
「レオン兄さん。新しい家族」
こくりと頷いた真にクレアは微笑みながらレオンからの伝言を伝えた。
「笑いながら"悪い子だなぁ"っていってたわよ」
「―――――!」
さぁっと血の気が引く。
やってしまった。離れる、なんてそんなこと一番してはいけないことだったのに。
急激に顔色が悪くなった真の様子にクレアが首をかしげる。
「どうしたの?」
「…なんでもない」
なにやら考え込んでいる真はまた歩き始めた。
レオンと再会する前にレオンを説得する言葉を考えなくては!!!
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