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海音寺雫様
初霜の候、ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。艶やかな錦繍の日々も過ぎ、晩秋の冷気を感じる季節になりましたが如何お過ごしでしょうか。
この度は、コント・ド・フェが五年の節目を迎えることになりました。つきましては、コント・ド・フェ関係者一同、下記により歓迎会を催したいと存じますので、ご出席のほど願いあげます。
記
日時:十一月三十日 午後七時〜
場所:【コント・ド・フェ】歓迎会特設会場
(詳しい場所については、同封の地図をご覧下さい)
会費:(当日会場で頂きます)
追ってご出席の有無、折り返しご一報ください。
コント・ド・フェ 管理人 幸田縁
連絡先 090‐XXXX‐XXXX
またはメールアドレス XXXXXX@XXXX.ne.jp 迄
「げ」
思わず最後の名前を見て、言葉を漏らしてしまった。勿論戒人も頭領も何故そんな反応をしたかは分からないだろうが、俺はこの人が苦手なのである。
幸田縁。コウダユカリ。
名前から分かる通り、頭領の血縁者である(縁だけに)。縁さんは何度か頭領の様子を見にこの屋敷に来ることもあるが、度々俺に対して挑戦的な態度を取られることがある。俺のことが実際好きなのか嫌いなのかは分からないが、吉屋さんといい、こうも俺は身内に疎まれなくてはならないのだろう。
「今、縁さんが管理人なんですか……?」
「――私も初耳だったんだけど……」
俺と頭領は、顔を見合わせて困ったような顔をする。戒人も確か縁さんに会ったことがあったはずだが、特に苦手意識はないようで、どうしてそんなに困った顔をしているのか、やはり全くわからないようであった。