「あの、縁さんがどうかしたんですか?」
「いや、ちょっと意外だったの。あの人、そういうのするタイプじゃなかったから……」
「俺はあの人から少し厄介がられてるみたいで、どう対応していいかわからないから、苦手というか。まあ、向こうが苦手なのかもしれないけれど」
「……あのさ、海音寺くん」
「はい?」
「私にも、敬語使わなくてもいいよ?」
「……はい?」

突然話題が逸れ、思っていた言葉とは違うものが出てきたので一瞬耳を疑ってしまった。え、何。

「いや、だって敬語使ってない時の海音寺くんって若者って言うか、今時の男の子って感じがして可愛いんだもの」
「……」

突然そんなお姉さんみたいなことを言われたら、俺は貴女にバブみを感じざるを得ない。洗濯籠を持っている頭領、料理を作っている頭領、掃除機をかけている頭領……これも新婚にならなきゃ見られなさそうではあるが、想像するだけでもなかなか来るものがある。

「ねえ聞いてる?私は気にしないから、ほら、一回敬語抜きで喋ってみてよ?」
「急にそんなこと言われても困ります」
「いいからー!一回灰音ちゃんって呼んで!」
「アイドルじゃないんですから」
「しーずーくっ!」

聖母のように微笑みながら突然俺の名前を呼ぶ、彼女は、無邪気さを残したまま俺を誘惑していた。初めてではないが、やはり、彼女に名前を呼ばれると言うことは一つの喜びではある。単純に言おう、頭領可愛い。

「あの、僕お邪魔ですよね?雫、いつまでそんなところまで頭領と仲良くなったんだ?」


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