ジグソーパズル | ナノ
(35ピース目)


 一人きりのクリスマスを迎え、私は携帯を握りしめている。
 あれから細渕の連絡は途絶えていた。
 不安をかき消すように、私は部屋に帰って来ると、浴びるように酒を飲む。休日の日は一人になることを恐れ、客とのデートを入れた。
 もうどうにでもなっても良いと思っていた。
 一週間たいんで細渕の連絡が入り、お金を持って行く。その理由はまちまちで、まとまった頃合いを見計らっているのだろうと、お金が入った封筒を渡しながら、私は思う。
 「真理恵、寂しい思いさせてごめんな」
 お金を受け取った時だけ、細渕は優しくなる。
 そして、細渕からは絶対に愛撫をして来ない。
 「ほら、食べたかったら食べても良いよ」
 自分の一物を私に握らせ微笑む。
 この人は客と同じ。
 冷めた感情のまま、細渕の躰を愛撫して行く。
 悔しいけど、細渕にだけ感じるエクタシー。どうにもならない欲情が絡み合う。帰ろうとする細淵に熱い口づけをするのが精いっぱいの、抵抗だった。

 足取り軽く離れた場所に置いてある車に乗り込む細淵を見送り、一人部屋に戻った私は酒で大量の鎮痛剤を流し込む。

 心が痛かった。
 嘘だと分かっているのに、お金を渡してしまう自分が嫌で嫌で堪らないのに、その反面で細渕と繋がっていたいという感情がある。

 精神的はボロボロになっていた。

 ふらふらしながら、トイレで吐きつづける。

 誰でも良いから救って欲しい。
 それでも口にすることが出来ずに、私は店に出続ける。

 そんなある日のことだった。
 
 目の前で客が注射器を取り出し、へらへらと笑う。
 「姉ちゃんも楽になるぞ」
 そう言われ、私は足をすくませた。
 その衝撃な事実を目の当たりにし、初めて私は目を覚ます。

 細渕から電話がかかって来たのはその翌日だった。そのことを話す私に、真っ先に言ったのは、まさかやっていねーだろうなだった。
 「やらないよ。廃人になんかなりたくないもん。私は陽のあたる場所を歩きたい」
 やっと言えた私に、細渕は怒りを顕わにしてくる。
 「何を言ってんだよ。今だってそうだろ?」
 「違うよ」
 「違うって?」
 「好きでもない相手と寝て、男にその金を持って行かれちゃうんだよ」
 細渕は黙ってしまう。
 それが二人にある真実。
 
 電話を先に切ったのは私の方だった。[*prev] [next#]
[BKM]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -