「ほらいい曲だろ? 俺の一押し」
「私の書いた……」
ロックが流れ、今日あったばかりの男は有無も言わさず、私をベッドに押し倒す。
強引な手口。抵抗するように手足を動かしたが、押さえつけらてしまい私は男に支配されてしまう。
「みんなそうなんだ。キスをすれば気持ちよくなる。ほらいいやろ」
執拗に舌を絡ませられ、敏感な所を弄られる。乱暴な手つき。タケオとは、全く違う愛撫。止めて欲しいのに体がうねってしまう。
ロックが止まった。
ぺちゃぺちゃと嫌らしい音が部屋中に響き、私は男の体にしがみついていた。
玄関を出て行こうとする私に、またしようなと男が言う。
私は何も答えずに、部屋を後にする。
セックスフレンド。
何の感情もいらない、体だけが目的だ。
私が最も嫌っていた世界なのに。
自分でもどうしてしまったのか、分からない。言えるのは自分は汚い。どんなに洗っても、この汚れは落ちない。
繁華街の看板が眩しかった。
歩きながら携帯を開く。
新着メール。
今までと違っていて、紳士的な文句が並べられている。
「わたくし細々ですが、セミプロとして舞台に立たせてもらっています」
――嘘だ。そんな奴が素人を頼ったりしない。そんなのは百も承知だった。
どうにでもなれ。
「会って話をしましょう」
場所と時間を指定して、送信ボタンを押す。
ホームに入ってくる電車を見て、ふらりと体が前に出る。
何もなかった様に、開くドア。
私はよろけながらその電車に乗り、ドアにもたれ掛る。
誰も知らない、遠い場所に本気で行きたいと思った。
[
*prev] [
next#]
[
BKM]