ジグソーパズル | ナノ
(10ピース目)


 「ほらいい曲だろ? 俺の一押し」
「私の書いた……」
 ロックが流れ、今日あったばかりの男は有無も言わさず、私をベッドに押し倒す。
 強引な手口。抵抗するように手足を動かしたが、押さえつけらてしまい私は男に支配されてしまう。
 「みんなそうなんだ。キスをすれば気持ちよくなる。ほらいいやろ」
 執拗に舌を絡ませられ、敏感な所を弄られる。乱暴な手つき。タケオとは、全く違う愛撫。止めて欲しいのに体がうねってしまう。
 ロックが止まった。 
 ぺちゃぺちゃと嫌らしい音が部屋中に響き、私は男の体にしがみついていた。
 
 玄関を出て行こうとする私に、またしようなと男が言う。
 私は何も答えずに、部屋を後にする。

 セックスフレンド。
 何の感情もいらない、体だけが目的だ。
 私が最も嫌っていた世界なのに。
 自分でもどうしてしまったのか、分からない。言えるのは自分は汚い。どんなに洗っても、この汚れは落ちない。
 繁華街の看板が眩しかった。
  
 歩きながら携帯を開く。
 新着メール。
 今までと違っていて、紳士的な文句が並べられている。
 「わたくし細々ですが、セミプロとして舞台に立たせてもらっています」

 ――嘘だ。そんな奴が素人を頼ったりしない。そんなのは百も承知だった。
 
 どうにでもなれ。
 「会って話をしましょう」
 場所と時間を指定して、送信ボタンを押す。

 ホームに入ってくる電車を見て、ふらりと体が前に出る。
 何もなかった様に、開くドア。
 私はよろけながらその電車に乗り、ドアにもたれ掛る。
 誰も知らない、遠い場所に本気で行きたいと思った。 
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