ちぐはぐな自分を持て余すかのように、くるメールをいくつかピックアップして、詞を送る。
男性の名前ばかりで送られてくるあたり、魂胆が見え見えで笑えたが、自分だって似たようなもの。
一人目。相手は高校生。誠実そうで考えていたよりも、真面目な曲が付けられていて、驚いた。一度会おうと誘われ、私は話をはぐらかす。相手が若すぎる。一緒にバンド活動に参加してくれとも言われた。
今度ねと言って、それっきり連絡を絶つ。
深入りは禁物。そんな言葉が頭を過った。
二人目。絶対に手渡しを条件に出され、私は指定された場所で待った。
改札を抜け出て来る、野暮ったい男が近づいて来る。
「マリさん?」
「はい」
濃いめの化粧をした私が、愛想なく答える。
「これ」
曲を焼き付けたCDを渡され、礼を言うか言わない内に、また改札口に逆戻りして行く背中を見ながら、小さく舌打ちをする。
大概はこのパターン。タイプかそうじゃないかを見たさに男はやって来る。きっとはずれだったんだろうと思う。
三人目も同じだった。
四人目は関西弁を話す、いかにも胡散臭い男だった。
慌てて家にCD 忘れて来たが、その男の言い分だった。見るからに怪しい男で、それなら良いです。と言う私に、執拗にここから近いを繰り返し部屋に誘った。
魂胆は分かっていた。ついて行けばどうなるかも分かっていた。なのに、私はその男の後ろをついて、歩いていた。
一駅、電車に乗り着いた、男の部屋。
引っ越して来たばかりと言っていただけあって、何もない小ざっぱりとした部屋だった。
「座るとこないな。そのベッドの上にでも、座ってて。曲、今すぐかけるから」
「ええー、ここでいいです。家で聞きますから」
玄関の前、ささやかな抵抗を試みる。
「ここまで来て、けったいな奴だな。ええからええから」
半ば強引に部屋に連れ込まれ、私をベッドに座らされていた。
電気が消された瞬間、私は観念する。
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