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「合宿、ですか?」


青学テニス部マネージャー、琴梨愛里は手渡されたプリントを見ながら首を傾げた。
この時期に合宿、というのも疑問なのだが何より参加校が不思議に思えたのだろう。
自分のところを含め名の知られる四つの学校と、
全く知らない初めて聞く学校。


「青学、氷帝、立海、四天宝寺はわかるけど、


漆世学園は知らないな。」


プリントを見て唸るのは副部長、大石秀一郎。
彼も漆世の名に驚き困惑していた。


「乾は何か知っているかい?」


「いや。大会に出る訳でもないからな。
データはない。」


ノートを見ながら答えるのは青学のデータマン、乾貞治。
ページを捲り、探しているみたいだがやはりないのだろう。


「大会にも出ないテニス部なんて強いのかにゃ?」


「そうだね。」


菊丸英二と河村隆もその実力を気にしていた。
合宿なのだから強い相手と、と思っているのだろう。


「漆世が主催者なんすか?」


「そうじゃねぇの?合宿先、漆世になってるぜ?」


行き先を見た海堂薫と桃城武が言えばみんなそこを見る。


「本当だ。漆世だね。」


「設備が整ってるからじゃないっすか?」


不二周助と越前リョーマが手塚に聞けば恐らくそうだろうと返ってきた。


「マネージャーは琴梨と漆世のマネージャー、二人らしい。
仕事はドリンクとタオルの用意。後はスコア付けだそうだ。」


大丈夫か?と手塚が愛里に聞けば大丈夫ですよ愛里が答える。
ほとんどいつもの仕事内容と同じであるからそう戸惑う事はない。
ただ一つ疑問に思ったのか、


「食事とかは作らなくてもいいんですか?」


「ああ。食事は漆世が用意するとのことだ。」


マネージャーがいないと見込んで頼んだのだろうか。
でも、その分の費用は大丈夫なのだろうかと愛里は思う。
そんなことを気にしないのか、楽しみっすねと桃城と菊丸が騒いでいた。


「氷帝、立海、四天宝寺とは漆世の前で合流することになる。
集合時間は書いてある通りだ。遅刻をしないように。」


明らかに越前に向けて言った言葉にわかったっすとリョーマは帽子を深く被った。
そんな光景を見ながら、愛里はもう一度プリントを見る。

初めて聞いた学園。
住所は都内だが、それでも田舎と言える場所。


「どんな人達なんだろうなぁ。」


喧騒の中、愛里はそう呟いた。





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