屈辱 反抗した青年たちは地下牢に閉じ込められ、二人をとらえた西条は有利になり燕の嫁として菜の葉を求めた。 しかし東も負けておらず、西が戦に有利になるために鴻を人質に取り菜の葉を取り込もうとしていると公言する。 一方菜の葉は……。 「菜の葉」 「は、はい。お父上」 「お前は上手く西之燕と仲を築いたのではなかったのか」 「……しかしお父上」 「戯言は聞かん」 菜の葉にお父上と呼ばれた男は菜の葉に手を上げる。 菜の葉の黒髪が激しく揺れる。 「……っ!! すみませんお父様」 「謝って済むのなら今頃冷戦などにはなっておらんわ」 「東之鴻様と西之燕様はとても仲睦まじくされております…それなのに…」 「仲睦まじいのはあの二人の青年だけだ。何年いがみ合っていると思う。東条を下し、西条と共に統治をする。それにお前が一番有効だったというのに」 心のない言葉を浴びせられる菜の葉はそれでも表情を引き締めている。 「燕様が鴻様を抑えて統一することをお望みになるとは思えません。あの方はそんなに残酷な方ではありません。私にはどちらかを選ぶなどそんな事……」 「お前はいい娘だと思っておったのに。失望した」 「……私だって……私だって幸せになりたい……っ……」 菜の葉は震え、涙をこらえながら座敷から駆け出していく。 「菜の葉様!!」 そのあとを追うようにして背の高い執事と思われる男が立ち上がるが、それを菜の葉の父上が制止する。 「放っておけ漆の尊。アイツがいなくとも、西条と手を組んだ以上強行突破で東条を下すことはできるであろう」 そう冷たく言い放つ菜の葉の父上を執事は悔しそうに見つめた後、あきらめきれないといったように座敷を後にした。 [演目] [しおりを挟む] |