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(はれんちです)







胸の頂はマダラの唾液でべっとべと。未だ胸を貪るマダラの肩に手を置き、大きく身体を震わせる。彼はちらちらと私の顏を見上げるように窺っていた。私が一つ、また一つ熱っぽい吐息を零す度に、マダラの目がいやらしい光を放つのだから嬉しくてたまらない。

「んや、マダラ…」
「…は、」

まだ布団にも入っていない。マダラと共に部屋に入り襖を閉めた途端、腰を力強く引き寄せられた。私の唇を何度も何度も啄みながらマダラは体重をかけてくる。彼にされるがまま自然と後ずさると、気づけば壁とマダラとの板挟み。あっという間に着物は乱され、素肌は晒され、彼の好き勝手にされている。いつだって平静な姿勢を崩すことのないマダラの、何もかもを忘れたかのような性急な求め方に戸惑いを隠せなかった。嫌なわけではない。ないのだけれど。

へたりと畳に尻をついたが、マダラの執着は健在である。膝をついて尚私の身体を熱い掌で撫でまわし、首筋を痛いほどに吸っている。身体の震えが止まらない。もうおかしくなってしまいそう。言葉も出せずただ目を虚ろにしていたが、ついに彼の指が足の付け根を探りはじめたので、はたと我に返る。

「どうしたのマダラ…?」

ようやく彼の頭を両手で捕らえた。今までの性急な動作が嘘だったように、ぴたりとその動きが止まる。つい先ほどまで私の腹の辺りを舐めまわしていたマダラが、私を見上げるその瞳。黒い瞳孔の奥で情欲の炎が確かに揺らめいて見えた。私をこんなにも欲しがってくれている。女としてこの上ない喜びに、マダラが一瞬だけ触れた下半身がじゅくじゅく疼き始めた。

「嫌か」
「そうじゃ、ないけど…」
「ならば何の問題もないだろう」

そう言うなりマダラは捕らえていた私の左手を取り、顔の前にかざして思わせぶりに目を細めた後、指の股にねっとりと舌を這わせ始めた。ひゃあ、と嫌に上ずった声が私の口から零れれば、マダラはいやらしげな笑みを浮かべる。指の付け根、関節、指の腹、爪先。私の中指の全てを舐め尽くしたマダラ。じゅうう、とわざとらしく大きな音を立てながら、彼は指を口から出した。

「俺のことが欲しくてたまらない瞳だな。涙まで浮かべて、よほど誘惑したいように見える」
「ち、ちがうもん…!マダラが変なことばっかりするから、」
「嗚呼それなら俺は、お前の誘惑に溺れてやらねばなるまい」

私の言葉もまともに聞かず、次の瞬間には再び乳房の頂に吸い付いた。右の頂はマダラの口の中、元気に動きまわる熱い舌に遠慮もなく舐られ、左は彼の骨ばった長い指できゅうっとつままれている。ああもう、感覚がじんじんと敏感になっていて堪らない。若干の痛みを感じるほどに胸の頂を犯されているのだ。散々彼になぶられた先端は、毎度決まって湯浴みの時に湯が沁みて酷く痛む。でも拒めない。後々の苦労などどうでも良くなるほど、気持ちいい。私は身体全体をびくんびくんと幾度となく震わせながら、マダラの頭を両腕に包み込んで乳房に押し付けた。自然と足が開いていく。

「ねえマダラ…布団っ」

喘ぎ声の合間に何とか訴えかける。彼は名残惜しげにじゅるると頂を吸った後、ぐったりとして力の入らない私の身体を易々抱え上げた。元より部屋の真ん中に敷いてあった二組の布団のうち、彼がいつも寝ているほうのものへ下された。先刻までの荒々しい愛撫とは似ても似つかぬ柔らかな下し方に瞬きを一つ二つ。

「あの、手ぬぐいか何か敷こうよ。マダラの布団汚れちゃう」
「構うな。汚れなんぞ洗うか新品に取り換えるかすれば済む話だろう」
「…じゃあマダラは今日どこで寝るの?」
「コマチの布団でコマチと共に寝ればいい」

さも当たり前のように答えた彼に、この胸が妙にときめいてしまった。彼と一緒に同じ布団で寝ることは珍しいことではない。特に、朝目が覚めたらいつの間にかこちらの布団に侵入していたマダラに抱きしめられていた、なんてことは頻繁である。いつもは私に興味などない素振りをしていることが多いが、他人の目のないところだと妙にくっつきたがる人なのだ。素直でない割には結構甘えたがりなのだから可笑しくてたまらない。しかしまあ、そんな一面を見せてくれるのもこの私にだけでしょう。胸の内を満たして溢れる愛おしさに、思わず頬を綻ばせた。

「何を笑っている」
「ううん。別に何でも」

私がにやけ顔ではぐらかしたからなのか、馬乗りになっているマダラは途端に不機嫌そうに眉をしかめた。

「余裕でいられるのも今のうちだぞ」

マダラは途端、情熱的な口付けを寄越してくる。急なことで半開きのままになっていた私の唇からすぐさま口内に侵入したかと思えば、全く遠慮もなしに暴れまわっている彼の舌。大きな口を開けたマダラは、さらに奥へ侵入しようと私の頭へ体重をかけ始めた。下には枕があるから大して苦しくはない。むしろ嬉しい。彼の押さえつける力と比例してその分だけ求められているような、愛されているような錯覚に陥る。もっともっと、欲しい。頬の裏を一通り舐め叩いてもマダラの熱情が収まる様子はない。ぺちゃぺちゃと音を立てる二人の口元に堪らなくなった私は、両の足を彼の腰元に巻き付けた。

するとマダラはあっけなく唇を離し、私の瞳を見つめた。何かあったのだろうかと、固唾を飲む。巻きつく私の足を手で捕らえたマダラは、するすると滑り落ちて腿のところで一瞬だけ動きを止める。そしていかにも艶やかさ漂う手つきで腿の肉を摘み、撫でて、滑った。今までの愛撫のせいで全身が性感帯のように敏感になっているから、淫らな触り方だけで私は反応してしまう。しかし嗜虐的な瞳のマダラが、私の反応をつぶさに観察して面白がっているのは歴然だ。あまりの羞恥に自制せねばと思い、マダラの唾液でしとどに濡れたままの唇を噛みしめる。

「耐えるな。声を聞かせろ」
「や、だ…はずかしい…」
「ほら…」

意地悪く口角を持ち上げたマダラは、散々に弄んだ私の腿を掴む。左右に大きく開かされれば、いとも簡単に露わになる股ぐら。まだ何とか私の身体に巻き付いていた下着をマダラはそそくさと払う。外気にさらされるソコの心許ない感触に、どぎまぎと肩を強張らせていれば、彼は自分の下半身を力強く押し当てた。

「マダラ…ぁ!」

未だ服を着たままにも関わらず、彼は猛々しく熱い性器を布越しに擦り付ける。私の陰部はもうべっとり濡れているのだから、こんなことしてはマダラの服が汚れてしまう。私は彼を咎めようと名前を呼ぶが、当の本人は全く気にする様子もなく腰を前後に揺らし始めた。変な、感触。その熱もその硬さも間違いなく彼のものなのに、いつもとは違う布のざらついた感触のせいで私は喘ぎを上げざるを得ない。マダラは今一度私の上に身体を倒し、首筋にその顔を埋めた。

「コマチ」
「うぅ…あん」
「コマチ」

ちくりちくりとした痛みを首に感じるので痕を残しているらしいが、もうそんなことに反応している場合じゃない。依然としてぐいぐい下半身を押し付けてくるせいで、渦巻くような快楽を喘ぎ声で発散するのに精一杯だ。マダラは激しい動きに似つかわしくない程甘ったるい声で私の名前を幾度となく呼んでいる。霞む意識の中でもぼんやりとそれは鼓膜を震わせていた。

「愛しい愛しいコマチ…」
「ま、アら」
「俺だけのコマチだ」
「…」
「愛してる…」

今まで散々高圧的な物言いをしてたくせに、突としてしおらしいことを言い始めたので微かに驚く。量の多い彼の髪をかき分けて、そろりそろりと私の手はその背中へたどり着いた。未だしつこく腰は動いているが、何とか声を抑えてマダラの様子に気を這わせる。早いペースで上下している温かく大きな背中。私の首筋にそっと押し当てられている熱っぽい唇。

「もっと俺を求めろ。我を忘れて喘いでくれ」
「…」
「そうすると酷く、」

安心する――と。私は少しの間瞬きも忘れて、はっと息を飲んだ。


どうにもいつもと様子が違うと思ったらそういうことだったのか。マダラが情緒不安定なのは今に始まったことではない。千手一族との戦況は芳しくないらしいし、一族の中でも戦に対する姿勢から反感を買っている、と小耳に挟んだこともある。今晩は随分と足早に私を寝室まで連れて、半ば強引に事に及んでいたが、つまり――。

ようやく我に返った私は、だらしなく開いていた口を固く結ぶ。足も腕も彼に力強く巻きつけて、存分にその身体を抱きしめた。

「マダラだいすき」

何て愛おしい人。心の底からそう思って、マダラの服に、背中に指を食い込ませた。察するにきっと今日は何か嫌なことでもあったのだろう。それで私を強引に抱いたりして、善がるこの姿に安堵を見出していたなんて。まるで子供のようである。要は私に甘えたかったのね、マダラ――なんて口に出そうものならマダラは羞恥に耐え切れず不機嫌になるだろう。妙な母性を感じて頬を緩めるが、彼を慰める言葉は口から出さない。プライドの高い男だ。在り来たりな慰めの言葉を気に入ってくれるかどうかも分からないし、ここで赤子のような扱い方をしてもやはり彼の気に障るだろう。私はひとしきりマダラに抱きついた後、ゆっくりと彼の身体を解放する。首筋から顔を上げたマダラの一瞬の表情が、わずかに寂しさを灯していたので小さく苦笑いを零した。

「マダラ…」
「ん…?」
「もう我慢できないから…マダラの、欲しい、なあ…」

自分で言っておいて恥ずかしさのあまり気を飛ばしそうになるが、きっとマダラは喜ぶだろう。ふと先ほどまでのマダラの姿を思い返したのだ。私に狂おしいほどの快楽を与えてはこちらが彼を求めているように仕向け、マダラはまるで仕方がないと言いたいふうに私を抱いていた。回りくどい甘え方である。とんでもなく面倒な子供である。――しかし私は、マダラのことが愛おしくてたまらない。そんな厄介な部分も全部ひっくるめて彼を愛している。彼と一生を共にすると決めたのだから、やはりマダラの喜びこそが私の幸せだ。私は恥をこらえながら、なんとか大きく両足を広げる。この先の行為を堪能したいという気持ちに嘘はない。

「フッ…」

マダラは私の照れる表情を目の当たりにして、愉快そうに鼻を鳴らした。私が甘えん坊のように両手を伸ばすと、彼はまた嗜虐的な瞳に戻った表情で私の身体を抱きとめた。単純で可愛い人だ。思わず笑い声を漏らせば彼が怪訝そうな顔をしたので、慌てて首を振る。口付けが欲しい。そう思って人差し指で自分の唇をとんとんと叩けば、マダラはすぐさま貪るように彼の唇を落とした。先刻と同じ、大きく口を開けてその舌を奥へ奥へと侵入させようとする激しさに、胸の高鳴りが一段と増していく。荒っぽい口付けをしながらも何やらもぞもぞと動くマダラ。ああズボンを脱いでいるのかと悟り、わたしのそこは期待にぐちゅりと音を立てた。





息つく間もなく揺さぶられ続ける。マダラと同じように、私も彼の善がる姿に恍惚を隠せそうにない。