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「#エロ」のBL小説を読む
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(100000Hits Thanks! 桜木さまへ)
(はれんちです)







あのイタチが拗ねた。いや。拗ねたとはまた少し違うかもしれないが、とりあえずいつもの状態でないことは確かだ。話しかければあの低く穏やかな声でしっかり応答してくれるし、頼みごとをすれば嫌な顔一つせず了解してくれる。では一体何がいつもの状態ではないのかというと、私がスキンシップを取ろうとすればやんわりと拒絶し、尚且つ夜の営みを全くもとうとしてくれないのだ。なんて馬鹿げた、と思うかもしれないけれど、少なくとも私たちイチャイチャラブラブカップルにはとんでもなく重大なことである。

いやそのなんといいますか。もちろん非は私にあるわけでしてね。つい先日長期任務から帰ったイタチを部屋に迎え入れ、おみやげ話もそこそこに密事へと流れ込んだのだが、そこで私はやらかしてしまった。達したふりをしそこねてそれにイタチが感づいてしまったのである。それはもうトロトロに溶け合ってしまいそうなほど甘美なるセックスの真っ最中でついにクライマックスだと言う時にぼんやりしてましてですね、その一瞬の気の緩み、表情や身体の反応を目ざとくイタチに見破られてしまったわけです。その後どうなったかと言うと…思い出したくもない。あんなに気まずい雰囲気の中でのそのそ服を着る二人の姿は傍から見たらとんでもないお笑い種だっただろう。

「いやもう本当に迂闊だった…!私だってれっきとした大人のつもりだし、まして色の任務も任されるくらいのくのいちなのに!よりにもよって一番大切な人との行為の最中に気を抜くなんて」
「そりゃあご愁傷様」
「確かにイタチは普通の人よりうんと観察力あるし勘も鋭いけどさ、でもそんなイタチ相手でも今までうまく演じきれたのに、それなのに…もう…あああ」

侮蔑の眼差しを寄越してくるサソリさんに私は身を縮こませながら弱音を吐き出す。そのうちには、あーとかうんとか適当に相槌だけを零して傀儡のメンテナンスに勤しみ始めてしまったサソリさん。彼からムンムンと放たれる、めんどくせえことにまきこむんじゃねえオーラに早速気力を削られてしまう。サソリさんに相談したのは失敗だったと薄々感づくものの、私はヤケになってすがりつくかのように彼に視線を送った。

「ホント、どうしよう…」

藁にもすがる思いではあ、とわざとらしくため息をつくとサソリさんは射抜かんばかりの睨むような視線を私に向けた。「お前バカだな」と吐き捨てるサソリさんに、いつもなら大人気も無く目くじら立てて突っかかるところだが、今回の件はどう考えたって私の過ちである。それを思うとさすがに何も言えず、自分の情けなさに押し黙るしかなかった。

「お前いっつも恋人に抱かれながら演技してんのか」
「べ、別に演技とか大層なもんじゃないけど…」
「良かったじゃねえか早々にバレて。このまま続けてたって間違いなくお互いのためにならないし、負担になるだけだろ」
「…うむ」
「イタチが下手くそなら下手くそってハッキリ言ってやんのもアイツのためになるしな」
「は、な、下手じゃないもん!上手いもん!ただほらァ、愛撫の長さは愛情と比例するって言うじゃない?イタチは愛撫する時も入れてる時も私がイクまで待っててくれちゃうから、何だかそれが申し訳なくって…」
「…」
「イタチに少しでも早く気持ち良くなってほしくてねェ」
「のろけんならさっさと出てけ」

と、次の瞬間には目に見えない何かすさまじい力によって、鼻の下が伸びた情けない顔のまま彼の部屋から追い出されてしまった。何が起こったんだとビックリしてじめじめと薄暗い廊下にぽつんと立ち尽くし、瞬きを数回。やっとのことで思考回路を繋ぎやっかい払いされたのだと悟ってから、さきほどのサソリさんのセリフを思い返す。何だか妙に納得してしまうようなことを言われた、気がする。さすがサソリさん年の功だ!隔ての向こうのオジサンに頭を下げ感謝するのもそこそこに、私は善は急げとイタチの部屋へ足早に向かった。



*****



「イタチのこと傷つけちゃって本当にごめんなさい」

ということでまずは仲直りのちゅう。咄嗟に身を離そうとするイタチの身体に腕を絡みつかせて、彼がその気になってくれるようにと存分にイタチの唇を吸った。舌にわざと彼の唾液を纏わせてそっと顔を離せば、淫らにきらめく銀色の糸。イタチの視線がそれに注がれているのをしめしめと思い、眉を八の字にして彼を見つめる。

「気持ち良くなかったわけじゃないんだよ、本当に!でもホラ、女の子の身体ってそんな簡単にイけないしね、それに」
「俺は」

途端に肩をガッチリ掴まれて真っ直ぐな眼差しを注がれる。その並々ならぬ威圧感から、余計に気分を損ねるようなことを言ってしまったかと慌てて謝罪の言葉を口にしようとしたが、それもすぐさまイタチの台詞に遮られた。

「コマチに余計な気苦労をかけさせてしまったのかと思うと自分が情けない。お前がどれほど俺を愛おしく思ってくれているかも理解していたはずなのに、自分だけ快楽に溺れるばかりで俺を案じるその可能性にも気づけなかった」
「そんな…」
「独り善がりだったのが悔やまれる。こればっかりは経験不足のなにものでもない」

至極真面目な顏で後悔の言葉を口にするイタチの姿に、胸の内で目を輝かせて恍惚に浸る。私のことそんなに大切に思ってくれてたのね!とこっそり喜びながらも、この雰囲気で騒ぎ立てるのはさすがに憚られるのでイタチに応えるような真面目な表情を保ち続けた。
違うんだよイタチ、イタチが気分良く行為に溺れてくれることが私にとってなによりの快楽なんだよ!うまく言葉に出来ないながらもたどたどしく、懸命にそう彼に伝えれば、イタチは苦笑いを浮かべて「俺だってそうさ」と零した。私の手をとり指を絡めるように握ってくるイタチの掌がうっすらと湿っていてドキドキしてしまう。

「もう怒ってない?」
「はなから怒ってなどいないさ」
「でも私に触られるの嫌がってたし、てっきり拗ねてるのかと思って」
「コマチを避けていたのは否定できないが、それも俺の勝手な罪悪感からだ。お前を責めるつもりなんて毛頭なかった」
「じゃあ私のことまだ好き?」
「もちろん、」

愛してる、と予想の斜め上をいく言葉をその形の良い唇で唱えられると同時に、胸の内から溢れ出る温かい気持ち。それが安堵からなのか、それともときめいたからなのかは分かりそうもなくて思わず息をするのも忘れてしまう。思い出したように彼のその手を力強く握り返すと、イタチはにっこりと目を細めた。

「じゃあさ、これからは二人で一緒にお勉強しよ」
「勉強?」
「どうやったら二人一緒に気持ち良くなれて、二人一緒にイけるのか」

私の台詞を聞いてフッと噴出したイタチ。おかしそうに肩を震わせる恋人を前にして、もっと他に最適な言い回しはなかったのかと若干の後悔を感じたが、彼の男としてのプライドを損ねないようにと改善策を伝えるその目的は達せられたのでまあ良しとしよう。久しぶりに機嫌の良さそうな恋人の姿を目の当たりにすると、今まで我慢していたものが不謹慎にも堰を切ったかのように腰を震わせた。何てったってご無沙汰である。なんだかそーゆー気分になってきちゃったぞ。

「ねえイタチ…」
「ん?」
「濡れちゃった、かも」

するとイタチはほんのりと顔を赤く染めて僅かに視線を逸らした後、ゆっくりと私の身体を彼のベッドに横たえた。もはやこの時点で堪えようもないくらいに胸が早鐘を打つ。あんなことがあった後だからなのか、少し緊張しているようにたどたどしく私の服を脱がしていくイタチ。その姿にまた一つ彼の知らない一面を見れたような気がして、気が上ずる一方でどこかぽかぽかとした温かい心地に絆されてしまう。ついにパンティに彼の手が差し掛かり、脱がせやすいようにと少し腰を浮かせてみればクチャリ、とはしたない音が部屋に響いた。

「淫乱」

イタチが嬉しそうにそう呟いたので、私は羞恥のあまり顔を真っ赤にする。割れ目を探るように彼の指がうごめくと、固く結んだ口からあっけなく喘ぎ声が飛び出した。慌てて口を手でふさぐとイタチがそれはそれはいじわるな笑みで口を歪ませ、これならどうだと言わんばかりにぷっくり膨れた秘豆をつまむ。背筋をゾクゾクと震わす快感に余計溢れた愛液をイタチは掬い取り、ねちゃねちゃと下品な音を立てながらその秘豆に塗りたくった。彼はどうすれば私が悦ぶのか、きっと的確に把握している。身体の僅かな震えも彼の肌をくすぐる吐息も、イタチは見逃すことなくそれを生かして攻めたててくるのだ。こんなにも濃密で喜ばしいセックスをしてくれるというのに、簡単には達することの出来ない自分の身体が心底恨めしくて堪らない。

「ひゃ、あん」
「気持ち良いか?」
「…言わなくても、わかるでしょ。イタチ上手いもん」
「ああ、それはさっき聞いたな」




「…え?」





(え、さっきのさ、サソリさん、え、え?)