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(100000Hits Thanks! つゆさまへ)
(はれんちです)







心の底から彼のことが愛おしくて堪らず、この思いの丈を目一杯こめてぎゅっとデイダラに抱き着く。大好きな人と抱き合うこの温もりも匂いも、何ものにも替えがたい特別で大切な、私だけの宝物だ。手放してなるものか。彼の首元に顏をうずめて目を閉じれば、デイダラはくすぐったそうに身体を震わせ、「こら」と私を叱った。そんな彼の言葉も聞かなかったふりして、デイダラから隠れるようにニンマリと笑みを浮かべる。

「ねえねえデイダラ」
「ん?」
「…」
「…」
「…なんでもなーい」

なんだそりゃ、と苦笑うようなデイダラの声が聞こえる。ただ名前を呼んだだけ、デイダラの名前を呼びたかっただけ。そりゃあ、好き!だとか愛してる!だとか私のこと大好き?だとか言いたいことも聞きたいこともいっぱいあるけれど、彼と抱き合う幸福感にもう胸がいっぱいでいっぱいで全部伝えきれそうになくって、彼の名前に存分に思いを込めたの。甘えたような私の声と含みを持たせた沈黙に彼は全部悟ってくれたかもしれないし、あるいはなーんにも伝わっていないかもしれないけれど。でもまあ、困ったように「なんだそりゃ」と零す彼の声音にでさえ胸がきゅんきゅん締め付けられるようにときめいてしまうのだから、わたしも俗物じみたものである。

「ねえねえデイダラ」
「なんだい?」
「…キス、したい」

彼の首元から顔を離し、その整ったお顏と真っ直ぐ向かい合う。デイダラの青い眼をぼんやりと見つめているといつの間にか吸い込まれてしまいそうな不思議な感覚を覚え、慌ててちょっぴりかさついた唇に視線を移し、遠慮も無く親指を滑らせた。

「食っちまうぞ」

え、と聞き返す間もなく、デイダラはうごめく私の親指をぱくりと咥え、様になるようなニヒルな笑みを浮かべる。指先が彼のぬめった舌に捕らわれる感触に、ひぃと情けない声が思わず口から零れた。今日は任務に追われることもなく部屋の中でのんびり2人っきりで過ごせるんだから、目一杯甘やかせてもらおうと私が主導権を握っていたはずなのに、彼に指を一舐めされただけで途端に下半身がぞくぞくして、すっかり攻められる気満々になっちゃうんだ。親指を抜き取ると嫌でも目につく、デイダラの唾液でテカテカ光る指先の様に私は顏を熱くして堪らず目をそらした。もうすっかり変な気分になってしまって、緊張で乾いてしまった自分の唇に唾液濡れの親指を押し付ける。

「食っちまうぞ、って…どっちの意味?」

湿らせた唇でちゅっとわざと響かせるように彼に口づけをすれば、デイダラはいたずらっぽく眉をあげて、さあな、とシラを切る。ずるいよ。これじゃあ私ばっかりその気になってるみたいで恥ずかしいし不公平だ。私がすっかりぶりっ子を決め込んでわざとらしく拗ねたように頬を膨らませてみても、デイダラは素知らぬふりしてニヤニヤと私を笑う。ああその表情にさえも。左の胸がきゅうんとなるその感覚は、とても不快なようでどこか心地いい。

もう我慢できないと飛びつくようにデイダラの唇にしゃぶりついた。舌と舌でお互いの唾液を存分に絡ませ合いくちゅくちゅと音をたてる。やはりなんて、卑猥な音なんだろう。口の粘膜が確かに触れ合うその感覚にも、唾液がはしたなく泡立つ音にさえも行きすぎたくらいに欲が煽られるのを感じた。私のとも彼のとも知れない唾液が口の周りをべっちょりと濡らしてどこかひんやりとするこの感覚ももはや快感である。


「コマチの目、ギラギラしてんぞ、うん」

いつもと違う口の中のその味に興奮して息を荒だてていれば、デイダラからからかうようなその一言。快楽に貪欲な今の自分の姿があまりにも恥ずかしくて照れ隠しに再び彼に抱き着いた。さっきよりもいくらか熱くなっている彼の身体にどこか喜びを感じ指を食い込ませながら、サラサラと揺れて金色に輝くデイダラの髪の毛を唇でくわえる。ああもう。胸はドキドキうるさいし息は苦しいし頭の中はぐちゃぐちゃだし。唇に感じる独特の感触で気を紛らわそうとするも、相も変わらず目眩のするような気分のまま。ぐったりとして体重を彼にかければ、まるで子供をあやすようにポンポンと背中をたたかれる。こんなことをされたいんじゃないのに、デイダラったら意地悪だ。

「デイダラきらい」
「おいおい、こんな雰囲気で嫌いだなんて普通言わないだろ、うん」
「うー、ドキドキしすぎてなんか気持ち悪くなってきたー」
「だ、大丈夫か?」

途端に目の色を変えて私の顔を覗き込むデイダラ。え、いや、そんな心配しなくても、別にそんな具合悪いわけじゃもちろんないですし…。真面目な面持ちで私と目線を合わせる彼の姿にさすがにちょっと決まりが悪くなって身をよじると、ふと、太ももに固くて熱いものを感じる。それが何なのかは考えるまでもないわけで、そう思うとさっきまでの意地悪な彼の姿が、してやったり顔が、とんでもなく滑稽に思えてくる。なーんだデイダラってば強がっちゃって。彼の首に腕を回し、わざと自分のそことデイダラのそれが擦れるように腰を前後に揺らしてみる。何も言わずに刺激を与え始めた私の姿に、デイダラが身体をびくりと震わせたのがもうおかしくておかしくて、思わず口角があがってしまう。

「あー、もう!オイラが悪かったって!」
「なんで謝ってるの?」
「は、いや、別に…」
「デイダラもそんな気になってくれちゃった?」

そんな私の大人げなく挑発するような言葉についに一線を越えたのか、デイダラは性急にわたしを押し倒し服に手をかけた。彼はいつも通りに服を捲し上げ、わたしはいつも通りにわずかに上半身を起こして彼が脱がせやすいように両腕を上げる。私の顏にパラパラと落ちてくるデイダラの髪の束に乱雑に指を通せば、はっと気づいたように彼は髷をまとめる髪ひもをといた。金色の髪がふんわり散らばる瞬間は、天井から灯された明かりの効果も相まって妙に艶やかである。上半身裸になった彼の頬を両手でしっかり捕まえて、その印象的な目元に負けじとしっかり見つめ合いにんまりと笑みを浮かべる。

「オイラに、どうしてほしい?」

未だかっこつけようとするデイダラの台詞にどう答えてやろうかと考えを巡らせば、無意識に意地汚い笑顔になってしまう。

「…」
「ん?」
「胸、さわってほしいなあ…」

その瞬間私の胸の先端をちゅう、と口に含んだ彼に、おねだりするような甘い声で善がるしかないんだから、私も随分とかっこつけで滑稽なわけだ。



(以下、ままごとのような心理戦)