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(100000Hits Thanks! 幸小里さまへ)
(お下品ちゅうい!)





「もうやだいっそのこと今すぐ爆発したい」
「…」
「この世から消えてしまいたいっ」

両手で頭を抱えて絶えることなく泣き言を言い続ける私に、何も言わず私の頭をなでるイタチ。イタチになでなでされるのは大好きだけど、その感触が心地いいんだよねとかそんな暢気なことを考えてる場合じゃない。顔を赤らめたり、かと思えば青ざめたりとすっかり絶望のふちでパニック状態の私を宥めるイタチのその様子。彼に限ってそんな薄情な訳がないとは分かっているものの、まるで自分自身はまったく関与していないかのように飄々としていて、イタチに生まれて初めてほんの少しの殺意を覚えた。だだだだ誰のせいでこんなことになったと思ってるんですかっ。

「ひ、ひひ、飛段に、言われたんだよ、最近お前たちお盛んだな、て!」
「ほう」
「コマチのあえぎ声が最近毎晩廊下に、ひ、響いてるからまるわかりだぜ!て」
「…そうか」
「暁のみんなに筒抜けだってことだよ…!どうしてもっとはやく誰か忠告してくれなかったの!鬼鮫とか鬼鮫とか、鬼鮫とか!くっそあの鮫が何もかも全部いけないんだわ!」
「落ち着けコマチ」

涙目になって必死に訴えるうちについには頭は酸欠で頭がクラクラしてくる。言葉が思うように出てこなくなり、不完全燃焼ではあるが大人しく口を閉じた。ああもう私これからどうやって生きていけばいいのかしら!イタチと夜な夜なそーゆーことに励んでるってことを他人に知られるだけでも恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないのに、それが暁のメンバーみんなに!しかもわたしがあんあん善がる声までも知れ渡っているだなんて、恥ずかしいとかもはやそんな単純な言葉で片付けられるようなレベルじゃあない。顔が赤くなったり青くなったりするのも当然であると察して欲しい。

「わたし暁のみんなにそーゆー目で見られてるんだきっとそれでリーダーとか任務言い渡すときにまじめな顔しながらも内心ニヤニヤしたりして私のことあざ笑ってるんだわ…っ」

暁の中でもいろんな意味で一目置かれるうちはイタチと言えば、あのポーカーフェイスで常に冷静沈着、状況に応じた正しい手段を的確に選び、生まれ備わった多大なる才能を用いて確実に任務を遂行する、まさに忍の鑑のような人である。それだけ崇高なお人であるイタチが性欲を溜め込んで夜な夜な情事に勤しんでいるとあらば、そりゃ周りの人から見ればおもしろおかしくてしょうがないのだろう。ましてその相手も暁の中で数少ないくのいちである私だし、暗くてジメジメした暁のアジトじゃあ恰好の的にだってなる。

「イタチがもっと常日頃から変態みたいな人だったら、好奇の目にさらされずにすんだんだと思うの」
「無理を言うな」

ベッドの上でひとしきりのた打ち回った後死んだようなまなざしで、最近お盛んだと暁のなかでもっぱらうわさ(かもしれない)のうちはイタチさんの顔をじっと見つめる。
昨晩いたした時に私の体中を這いずり回ったその形のいい唇とか、最中にはずいぶんと熱が篭りじっとりとした眼差しに変わるその眼とか。いつもは目にするだけで胸がきゅんきゅんするはずなのに、今はそれこそ諸悪の大根源としか考えられなくて、思わず歯をキシキシとならした。
そんな私の様子にイタチはようやっと恋人の苦悩の重みを悟ったのか、手を少し引っ込めた後眉尻を下げて、恐る恐るといった風に私の頬を撫ぜた。

「触らないで下さるかしら」
「まあまあ」
「…」
「…」
「すっごく恥ずかしいんだから、馬鹿」
「すまなかった」

するとイタチは困ったように苦笑いを浮かべて、ベッドに横たわる私の手を取り、もう片方の手で包み込んだ。その温もりとイタチが滅多にしないようなその表情に、今まで散々のた打ち回り暴れ回っていた自分がどうしようもないお子様であるような気に何故だか襲われる。わずかな罪悪感を感じて思わず肩をすぼめた私の姿に、彼は目を細めた。

「ふと、な」
「…」
「いつ死に行くかも定かではない自分の今の立場を改めて見つめなおした時、コマチを存分に抱きたくなる。子孫を残すがための生物の生殖本能と言われればそれまでだが、心の底からお前が愛おしくて自制も効かなくなるほどだ」
「そ、そう…」
「毎晩のようにお前を求めたのは、コマチも嫌がっていないことを考慮した上での行為のつもりだったが…嫌だったか?」
「別に、嫌じゃないけど、さ」
「俺に全部押し付ければいいさ、毎晩求められ断ることも叶わずただ声を上げて受け入れるしかなかったんだ、と。そうすればお前に非はない。いくらか気も軽くなるだろう」

珍しくよく喋るイタチを目の当たりにして、思わず言葉を失う。常日頃から難しい言い回しをする彼が今口にしたことを浮かべては飲み込み、それを繰り返す。瞼を数回ぱちくりさせ深呼吸をした後、やっと彼の言葉の内容を理解して視線をそらし思う事といえば

「(ベタでギザね…)」

である。何が生殖本能よ、なーにが全部俺に押し付けろよ。と、さすがに彼に面と向かって異論を唱える勇気はないので、一人悶々と胸のうちで文句を一通り列ねては見るものの、思わず吊りあがってしまう口角はいったい何なのか。彼にばれない様に急いで枕に顔を埋めニヤニヤしてしまうなんて、結局のところ私もあながち満更でもないということだ。こういう風にベタでギザなことをすらすらと恥じらいもなく言えてしまうのも、イタチのいい所といいますか。大好きな人に心から求められていると知って喜ばないわけにはいかないでしょう?わたしは依然彼から隠して笑みを浮かべたまま、つながれたままのイタチの手を握り返してみた。

「コマチ」
「…うん」

彼からの呼びかけに、このまま拗ねた状態を決め込むか、素直に顔を起こし満面の笑みで甘えるか、ほんの少し考え込む。悶々とした気持ちは明後日へ飛んで消えたにしても、掌を返したようにひょっこり態度を変えるというのは、自分のプライドとか体裁が許さないといいますか…うぅむ。最良の手段も浮かばないまま、私は顏を上げずに声のトーンを落として手探りのように口を開く。

「…じたばたしてたらお腹すいちゃった」
「そうか」
「なんかおいしいもの食べたい、奢ってよ」
「そうだな」

と言って控えめに笑うイタチの声に枕から顔を起こし、立ち上がる。身だしなみを整える間、特になにも喋らずお互いだんまりではあったが、あっという間に絆されて晴れ晴れとした胸の内に柔和な空気を感じる。相も変わらず単純で扱いやすい自分に反省することもなく、ニヤニヤとおそらく気味の悪い笑顔を浮かべながらイタチとアジトの出口に向か…


う途中に事件は起こったのであった。


「よぅ、お二人さん」
「なんだいなんだい、二人でお出かけか?うん」

任務帰りできっとクタクタに違いないのに、至極楽しそうに趣味の悪い笑顔を浮かべながら私たちに詰め寄る芸術コンビ。しまったと後ずさりしようにも、ここで逃げては逆に変な方向に誤解されるだけだと気づき思いとどまる。

「どこに行くんだよ?」
「その手の宿とかかい?アジトの中じゃ声が筒抜けだもんな、うん」
「毎晩毎晩ご苦労なこったな」
「イタチも淡白そうな顔して随分たまってんだろ!うん」
「それに応えるコマチも大変だなあ?」
「大変じゃねえっての!おいら達と話してるときには絶対に出せないようなあんな甘ったるい声で喘いでんだ、ずいぶんとお楽しみなんだろ」
「元気な亀のお相手して毎晩お喜びか」

例えばデイダラの私たちをからかってしてやったりなドヤ顔とか。例えばサソリさんの、間違いなくセクハラの域に踏み込んだおっさんみたいな発言とか(おっさんだけど)。せっかく平穏を取り戻したはずなのにまざまざと先ほどまでの羞恥が蘇り、体が震える。あっという間に頭まで血が上り、頭の中で二人のいやらしい笑みがぐるんぐるんと回り続けた。つまりあまりの恥ずかしさにどうしていいかもわからず、私にはパニックになって当り散らすしか手段はないわけでして。



「なによなによ!そーよ毎晩お楽しみよ楽しんじゃ悪い!?毎晩毎晩元気いっぱいの亀さんにあんあん言わされてんのがおかしくてしょーがないんでしょ!そ、それともなに羨ましいんでしょう!?デイダラはそれこそ毎週石鹸臭いし?サソリさんはもう35で若いイタチみたいに精力もないだろうし?まーねー、イタチもイタチの亀さんもわたしのことが大好きで大好きでたまらないんだから恋人同士として当然の営みよねえ!」





(…コマチ、お前はちょっと、黙ってろ…)
(…!)