(10000Hits Thanks! 幸小里さまへ) ベッドの上での密事の後、シャワーを浴び終えて部屋に戻る。薄暗い部屋の中で足元に気をつけながらベッドへと近づくが何も声をかけられない。目を細めてベッドの上をよくよく見れば、イタチは下着だけを身に着けた格好で目を閉じ横になっていた。 「…イタチ、もう寝た?」 「…」 「…寝ちゃった、かな」 セックスの後の愛おしいような照れくさいような、ゆっくりと流れていくあのなあなあな時間が好きである私にとっては、イタチがすでに眠りについてしまっているというのは些か寂しいような心地である。かといって彼を引っ叩いて起こすわけにもいかないし。もう夜も遅いし寝てしまおうと、そっとベッドに腰掛ける。スプリングの軋む音にイタチを起こしてしまいやしないかと若干気にしつつも、のそのそと彼の隣りにもぐりこんだ。眠いような気もしたが、イタチの寝顔を拝めるのにこのまま寝るのはあまりにも惜しい。 「…」 ああ、僅かに香る汗の匂い。普段は楚々として雄の雰囲気をあまり感じさせない彼だが、情事の最中や事後に香るのは間違いなく雄の匂いで。フェロモンだなんてそんなものはよく知らないけど、匂い一つで私の胸を高鳴らせるとは。まるで引き寄せられるかのように彼の胸板に静かに左手を置くと、とくとくとリズムをとる鼓動を感じた。線が細い割にしっかりと筋肉はついているようで、手を滑らせて撫でまわしたい衝動に駆られるが、そんなことしたらイタチが起きちゃうね。 「でも…ちゅう、したいな…」 だって私たちは恋人同士だもの!何も後ろめたいものはないのだ。とはいえすやすやと寝息をたてる人の唇を奪うのはやはりいけないことのような気がして、どぎまぎしながら周りを見渡す。うん、大丈夫大丈夫。思わずベッドの上で正座をして、ふっと息を吐く。恋人とキスするのに正座なんて、傍から見たらきっと間抜けな姿だろうけれど。小さな窓から頬を撫でるように吹き込む柔風を小さく吸い込んだ。 彼の顔の横に膝をついた途端ギシリと鳴るベッド。むぅ、ギシギシうるさいぞ!気を削がれ思わず腰が引けそうになるわが身をしっかり留めて、恐る恐る顔を近づけていく。小さく開かれたイタチの口から零れる寝息が唇を微かにくすぐり思わず悶えるも、そのままちう、と口づけをした。 「は、ふぅ」 最近イタチとするキスと言えば舌と舌とを存分に絡ませあうようなアダルトなキスばかりだったので、一瞬唇を寄せるだけの幼稚なキスは、なんとも、逆に。身体を起こし、変な吐息を零す。ふと正気になった瞬間に襲い掛かる真夜中の静寂に、どうしよもないようなやるせなさを感じもじもじと身を小さくした。 「(うん…寝よう)」 照れくささというかただの罪悪感というか。そんな複雑な心を引きずりながらいそいそと再び彼の隣に潜り込も、うと、し…。 「いつから起きてましたですか、イタチさん」 「お前が部屋に戻ってきたあたりからだ」 「ぜ、全部寝たふりだったの!?」 「おかげでいいものが見れた」 ずっと目閉じてたくせに!なんて反抗しようにも、私の口は既にねっとりと彼の唇に捉えられているのだから、 ミッドナイトはパステル (コマチの匂いがふわりと漂ったんだ) |