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(はれんちです)








「人殺しぃ…!」

「え、」

「ぅー、うぅ…いたいよー…」

言葉で表すとするならばまさにガビンというような、酷くショックを受けたような顔をしてイタチは動きを止めた。しまった、言いすぎちゃった。イタチを非難するようなつもりは全くなかったのだが、あまりの痛さについうっかり。依然として涙を流しながら体を強張らせる私の頭に、そっとイタチの手が乗ったので恐る恐る眼を開いた。苦笑いしてる姿が妙に大人びているように見えて、嗚呼それに比べるとわたしなんて、とたまらない程やるせなくなり思わず彼から眼を背ける。

「今日もやっぱり無理だな」
「ん…」
「…すまない」

イタチは心底申し訳なさそうな顔をして私の頭をそろそろと優しく撫でている。その温もりの心地よさに段々と身体から力が抜けて、乱れていた呼吸も落ち着きを取り戻していった。それなのにやっぱり私の心は晴れずにモヤモヤとしてばかりで、何も言えずにゆっくり目を閉じた。

これで4回目のチャレンジなのに、なんで。まあ指を入れるのでさえ痛かったのだからこうなることは目に見えていたのだけれど。時計の針の音だけが妙にうるさく部屋に響き渡っている中、素っ裸でただただ抱き合う私たちの姿はきっと酷く間抜けだろう。今日こそは絶対イタチとひとつになるんだと決意したのにどうして結局駄目になっちゃうの。初めてさあ挿れようとなったあの時、指とは比べ物にならない痛みはまるで身体を真っ二つに引き裂くような感覚で。無理無理こんなの絶対無理とまるで子供のように泣きじゃくるしかできなくなった私を見かねて、その度に中途半端な状態にも関わらず中断してくれるイタチ。

(このままじゃ、いつまでたっても大人になれないよう…)

お母さんも友達も憧れのモデルさんもみんなみんなこの痛みに耐えることができたのだろうか。処女膜がなんだこんにゃろう、たかが膜じゃないか!なんて下品なのはご愛嬌。そう無理矢理に自分を励まして、4回目の今日こそは必ずイタチと結ばれるはずだった。

布団の脇に追いやられていた下着を摘み上げ足を通すイタチの姿から哀愁を感じる。私も上半身を起こして、そろそろと手探りで枕を抱き寄せた。顔を埋めた枕からふんわりと漂うイタチの匂いに無性に泣きたくなって鼻をすすると、イタチはどうした?とすぐに心配して肩に手を置いてくれた。イタチイタチ、私ね。少し涙が滲んだ目で彼をまっすぐ捉える。眉をさげて私の顔を覗き込むイタチに思いっきり顔を近づけて、ちゅ。一瞬のキスを終えて枕を後ろに放り投げる。ぼふっと控えめに響く落下音を聞いてから勢いよくイタチに抱きつき、深呼吸を繰り返した。右足の太ももにあたる固いソレはイタチのソレで、いつもいつも私のせいで不完全燃焼のまま下着に仕舞われるソレで。

「イタチ」
「ん?」
「最後まで、やろう」
「…」
「痛いって泣き叫んでも気にしないで、無理やりでも良いから挿れて」

そこまで言うと酷く動揺して、無理するな、とイタチは叱るように声を上げた。だってこのままじゃいつまで経っても出来ないじゃん。どんなに決意を固めたって結局、痛い無理やめて、しか言えなくなっちゃうんだよ。だったらもう無理やりがんばるしかないじゃん!

最早、イタチと一つになりたいだとか一つに結ばれてその幸せを胸に満たしたいだとか、そんな甘ったるい考えじゃなかった。せめてイタチを気持ちよくさせなければ。任務の時だってデートの時だっていつも私のわがままを快く受け止めてくれるイタチ。常日頃から大した恩返しもできないくせに、こんな時でさえ私はイタチを困らせることしかできないのか。罪悪感と焦りで胸がいっぱいで自暴自棄になるしかなかった。

「どんなにやめてって言ってもやめないで良いから」
「コマチ…」
「男の人って、初めてでも気持ちいいんでしょ?じゃあ大丈夫だよ」
「何が大丈夫なんだ…」

彼の肩を掴んでひたすら言葉を続ける。初めのうちは駄目だと首を横に振り続けるイタチだったが、それでも全く聞く耳を持たない私についに観念したのか、大げさにため息を一つこぼしてから布団の上に私を再度押し倒した。イタチが下着を脱ぐ姿はなんとなく見ちゃいけないような気がして、ふと目を泳がせると、脱ぎ散らかした二人の衣服が目に入る。どうしようめちゃくちゃ恥ずかしい今すぐ帰りたい。早速逃げ腰なわたしだったがそれももちろん叶わず、イタチに足を開かされ、じっと顔を見られる。

「深呼吸して、力を抜くんだ」
「ん…」
「その…キスをしながら挿れると、リラックスできるらしいから、」

顔を赤に染めてバツが悪そうにしながらイタチの顔が近づいてくる。くちゅ、じゅる。いわゆるべろちゅーというやつ。舌と舌とを絡め合う感触も唾液が口の端から零れ落ちる感覚も背筋が震えるほど気持ち良くて下半身が素直に反応してくれる。果たしてこれでスムーズに事に運べるかは甚だ疑問だが、それでも良い。イタチのソレの先端が入り口に宛がわれた瞬間、コマチ愛してる、と耳元で囁かれ静かに鼓膜が震えた。私だって負けないくらいイタチのこと愛してるよ。嬉しさのあまりにそう答えようとすれば…いたた、たた、いたあああい!



(それから一週間の間、下半身の鈍痛に頭を抱えるのはまた別のお話)