(ややはれんち) 今一番言いたいことと言ったらやっぱり、お父さんお母さんごめんなさい、かな。別に怒られるようなことじゃないし、お父さんもお母さんも当然していることなんだけど、どうしよう、すごく罪悪感。世の女性達はみんなこんな風に罪悪感を感じながら大人になっていくのだろうか…不思議でしょうがない。 コマチ、と柔らかな音色で名前を呼ばれて口も目も固く結び身構えていると、私の上に馬乗りになっているイタチがクスクスと笑い始めた。むむ、こっちはすっごく真面目なのに。溢れ返る羞恥心に身を任せ馬鹿馬鹿と彼の胸をポコスカ叩いていると、イタチは困ったように微笑みながら私にキスをした。もう何度も重ねあったイタチの唇がいつもより少し熱いことに気づき、ゆっくりと彼の首に腕を回す。 「イタチは、緊張してる?」 「もちろんさ」 「でも、全然そんな風に見えないよ。私ばっかりドキドキしてるみたい」 「なら、これで伝わるか?」 イタチは私の手を取り、自分の左胸に押し当てた。本当だ、私と同じくらいドキドキしてるんだね。きっといつもより早いイタチの鼓動のリズムに、そっと目を閉じる。せめて少しでも落ち着こうと大きく息を吸い込み、カーテンの隙間から零れる一筋の光に照らされたイタチを見上げた。大好きなイタチ、愛おしいイタチ。 「良いよ、イタチ。私は大丈夫だから」 「ハハ、大丈夫そうにはまったく見えないが」 「な、またからかって…んぅ」 静かな部屋に響く甲高い声はいとも簡単にイタチの口に吸いこまれてしまった。なんか悔しいな、やっぱりイタチ余裕じゃん。思わず身体が強張る私とは大違いだ。だからこそ、必死に彼のキスに応えようとした。歯茎をなぞるイタチの舌を私のそれで追いかけて、ねっとりと絡める。絡めた舌先がとても温かで溶けてしまいそう。 怖くないと言えばうそになるけど、嫌なんかじゃないから。精一杯の決意である。 ついにイタチの手が私の上半身に置かれた。大丈夫、一番のお気に入りの下着をつけてきたんだもの、と自分に言い聞かせ、行き場のない手でシーツを力強く握りしめた。 彼の綺麗な指がボタンを外そうとしたその瞬間、嗚呼いよいよ始まるんだといきなり実感が湧いてきて、たまらないほど羞恥に蝕まれる。やっぱりやめようよ、そんな言葉が口から飛び出そうになるのを必死で堪えた。 ひとつ、ふたつ。 お互い一言も発することなく、ただボタンが外されていく。緊張で上がる息に胸元が上下した。必死に目をつむって羞恥に耐えようとする私だったが、なぜだか三つめのボタンが中々外されない。恐る恐る目を開いて胸元は見れば、イタチの手は確かに動いていて、それでもボタンは外れなくて。 「どうしたの…?」 か細い声でそう尋ねれば、途端にイタチは顔を真っ赤にして眉をひそめた。何か、気に障ることをしてしまっただろうか、と不安になるところに、イタチの手が微かに震えていることに気が付く、もしかして。緊張、してるの…?そう投げかければ彼はさらに顔を赤くして気まずそうに顔を逸らした。 なあんだ。イタチだって本当はめちゃくちゃ緊張してるんだ。そう悟った瞬間、自然と肩の力が抜け、思わず笑いが込み上げた。クスクスと笑っているとイタチはバツが悪そうな顔をしてから私の口を手で塞いだ。 「わ、笑うな」 「イタチだってさっき私のこと笑ったじゃん」 言葉に詰まるイタチ。緊張で手が震えて彼女の服もうまく脱がせることができないイタチなんて、この世で知ってるのは私だけなんだから。天才だ秀才だと日々もてはやされているカッコいい彼氏様の、人間くさい一面。左の胸にじんわりと沁みこむその感覚に、私は泣きたくなるほどの幸せを感じた。 愛って、ららら (これが私の初体験ってやつ) |