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「#エロ」のBL小説を読む
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「はい、あーん」

「…あーん」

「美味しいですか、コマチさん」

「ん…まあおいしいよ」


お粥が美味しいわけなんてないが、そんなまじまじと見つめられたらこう答えるしかないでしょう。私の言葉を聞いて、ぱあ、と可愛らしい笑みを浮かべるサイの顔を見ながらお粥を飲み込んだ。「プリンもありますよ、どうぞ」なんて言って、プリンの乗ったスプーンを容赦なく私の口に突っ込み満足げな顔をするサイ。た、確かに、プリンが食べたいってさっきお願いしたのは私だけど。口の中にまだ少し残ってたお粥とプリンが混ざり合う感覚に思わず戻しそうになったのを慌てて引っ込めた。


「お水飲みたい」

「わかりました、僕が飲ませてあげます」

「え、ちょ、んぐ」


僕が飲ませてあげます、なんて言葉で口移しを一瞬でも期待した私が馬鹿だった。サイが私の口元へとコップを運び、無理やり流し込もうとそれを傾けたもんだから水は見事に私の口に入ることなく、溢れてじんわりと服にしみこんだ。顎をぽたぽた落ちていく滴にあきれ果てて何も言えずにムスッとしていると、サイは早々と私の寝間着のボタンに手をかける。


「濡れた服なんて来てたら熱が上がりますよ」

「じ、自分で脱げるから!」


さっきからずっとこんな調子だった。

私が熱を出し寝込んでいるとどこから聞きつけたのか、すぐさま私の家に駆けつけ「僕が看病します」と誇らしげに宣言したサイ。何が食べたいかとしつこく聞いてきたり、何度も何度も布団をかけ直してくれたり、正直ちょっと煩わしい。いやいや、いとしい彼女さまのために気を遣ってくれるのはすごく嬉しいんだよ。すごく嬉しいんだけどさ…。

その不器用な看病に翻弄されているせいで余計に熱が上がりそうだとオデコに手を当てる。サイが家に来て真っ先に貼ってくれたひえぴたシートはすでに温みを帯びてきていた。


「サイ、着替えるからちょっと部屋から出てって」

「ダメですよ、僕が居ない間に何かあったらどうするんですか」



やっぱり僕が脱がします、とサイが再びボタンに手をかけ…ぎゃああやめろこんにゃろう!具合が悪いとか言ってる場合じゃない、とりあえず私の貞操が大ピンチだ。
私よりもずっとずっと白いその腕をがっちりと掴んで、やっとの思いでサイの手を止めることが出来た時には、お気に入りのパステルピンクのブラがひらけたところから垣間見えるような状態だった。ああもうお嫁にいけない。胸の内でこっそり涙を流す。


「看病は彼氏の勤めだと、本には書いてありました」


ハッと顔を上げてみれば、おもちゃを取り上げられた子供のように心底悲しそうな顔でサイが私を見つめていた。

知ってるよ。サイが自分に常識が欠けていることを自覚して、せめて少しでも普通でまともな彼氏になれるように一生懸命勉強してること。その不器用な看病だって全部私のことを思い遣ってくれてるからでしょう。私のことが、本当に好きだからでしょう。

目の前でしゅんとして何も言わなくなってしまったサイの瞳はどんよりと曇ってゆらゆら揺れていた。
こうやって素直に感情を表に出してくれるようになったのは、出会い始めのころに比べれば大きな進歩だ。日に日に人間くさくなっていく彼を、私はいつの間にか手に入れた彼女という立ち位置で見守っていた。笑ったり寂しがったり、最近はそういえば嫉妬もしてくれるようになった。なんて可愛いんだろう。そんな風に思う気持ちが恋なのか、はたまた母性に近い愛なのか今の私にはさっぱりわからないけれど、何が食べたいかとしつこく聞いてくるのだって何度も何度も布団をかけ直してくれるのだって、そんな不器用な君の愛がたまらなく愛おしいんだから。

ひらけた前を隠して、ジッと彼を見つめる。ごめんねそんな顔しないでよ。そう伝えようと思って声を出そうとするやいなや、サイが口を開いた。


「その下着はこの前セックスした時にも着けてたやつですよね?熱があるっていうのにその気満々ですか?もちろんコマチさんがその気なら僕は今すぐにでも全然大丈夫ですけど。あ、さっきからジッと僕のほうを見てるのも、やっぱり僕が欲しいんですね」







(ん?こんな風に空気読めてないところが萌えポイントなのか?)