(ややはれんち) 「イタチー」 無性に人に甘えたい時がある。甘えたい、というか人肌が恋しい。詰まるところ、抱きつきたい。私が甘えたような声を出してギュッと抱きつくとイタチは困ったように笑った。 「どうした?」 「別にー」 「何かあったのか?」 「ううん、なんか人肌恋しかっただけ」 イタチから香る良い匂い、多分石鹸だ。妙に色気付いて香水の匂いを漂わせるよりずっと魅力的だと思う。清潔感を感じさせる彼の身体にもっと触れていたくてイタチの背中に回す手に力を込めると、まるでふわっと包みこまれるかのように抱きしめ返され、思わず頬が熱くなった。 「イタチあったかいし良い匂いがする」 「コマチも良い匂いがするぞ、シャンプーか?」 そう言って私の首もとに顔を埋め、髪の匂いを楽しむイタチ。時折イタチの吐息が私の首を掠めるのがくすぐったくて小さく笑い声をあげると、顔を上げニヤリと怪しく笑ってから彼は再び顔を埋めて、わざと首を掠めるように息を吐き出した。 「や、イタチ、くすぐったいっ」 表面ではイヤイヤと拒んでいるが、実際はイタチとじゃれ合っているのが楽しくてしょうがない。しかし、受け身でいてばかりいるのは癪だったので軽く力を込めて彼の肩を押し返せば、イタチはなんとも満足げな表情を浮かべていて、思わずやり返したくなる。 「ちょ、コマチ、」 彼の耳に唇を寄せふぅ、と息を吹き掛けるとイタチの身体が震えた。少し前に友達から借りたちょっぴりえっちな漫画に、耳に息を吹きかけじゃれ合うシーンがあったのを思い出す。まだまだお子ちゃまの私には実際どんな感じなのかわからなかったが、これはなかなかおもしろい。 形勢逆転、さんざん苛めてやろうと漫画の内容を思い出して息を吹きかけたり耳たぶを優しく噛んだり、浅いところを舌で舐め遊んでいると、次第にイタチの声音が変わっていく。 「…ん…あ、う」 いつものイタチじゃないみたいな声だった。 いつもは凛として清らかな声を出すイタチが、少し情けないような弱々しい声を出している。なるほどこれが喘ぎ声というやつか。 そして可笑しなことにそれを聞いている私にも変化があるようで、イタチの声を聞く度に下半身に違和感を覚えた。焦れったいような、ムズムズするような変な感覚である。 「…やられっぱなしは、性に合わない」 「え?」 イタチが早々と私の下から逃れたかと思えば、気付けば畳の上に倒されていて、その上にイタチが馬乗りになった。 ぴちゅ、じゅる 突然に耳を舐めるイタチ。それと同時に身体にかけめぐる刺激に 「あ、ん」 変な声が出てしまった。まるでビリビリと電流がかけめぐるような感じに私がしどろもどろしていると、イタチは尚一層気を良くしたようで、構うことなく耳を苛め続けた。 「ふあ、あ」 「コマチ…」 「や、イタ、チ、んあ」 とりあえず、私たちは今えっちなことをしてるだ、ということは分かる。だから私は空気を読んでイタチを煽るように、声を我慢しようともせずされるがままでいた。 このままえっちしちゃうのかな。やっぱり初めてって痛いのかな。ていうか避妊具とかどうするの。 いつの間にか耳から離れたイタチの唇に濃厚な口づけをされながら、不安がぽんぽんと頭に浮かぶ。しかし、それに勝る好奇心が私の胸を高鳴らせ、刺激し興奮させるようで。 しかし。 彼に大切に扱われる心地よさをひしひしと感じながらキスに応じる私の耳に急に鳴り響いたのは、少し遠くで戸が開く音。 「ただいまー」 イタチいるのー?と澄んだ声で部屋に近づいてくるのは、間違いない、イタチのお母さんだった。 ファーストチャレンジの行方は (慌てて身体を起こし髪や衣服を整えるあたふたしたイタチが堪らなくおもしろかった) |