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(ややはれんち)








サイ君って醤油顔だ。


いやいや、決して自分の彼氏を貶してるわけじゃない。彼は女の私が悔しいほど綺麗に整った顔をしてやがる。私なんかがあれこれ文句なんて言えるわけない。
私が言いたいのは、彼は草食系っぽいってことで、狼っていうよりは断然羊さんだってこと。
もともと基本的な感情に乏しい彼だし、性欲なんてなさそう。
男は狼なのよ、だなんてよく言うけど、彼に限ってそんなことはないだろうと思ってた。

…のだけれど。





「さ、サイ君…?」


心なしか息があらいようなサイ君はソファーに私を押し倒して、それはそれは辛そうな顔で覆い被さる。
いつも余裕そうな笑顔を浮かべているサイ君がいったいどうしたというのか、いや、こんな状況で気づかないほど私は子供じゃない。そういうことなんだってわかってる。
チラっと視線を下のほうにずらすと、彼のズボンの中心に盛り上がっているものが見えた。
うそ、あのサイ君が?彼のそれから視線をはずさなければと思いつつも、行き過ぎた動揺のせいか好奇心のせいか、ついつい見続けてしまうとサイ君は襲いかかるように私の唇にむしゃぶりつく。
いや、ではない。とりあえず彼の舌の動きに合わせようと絡め合ってしばらくすると、彼の舌はゆっくりと自分の口内に戻り、唇も離ればなれに。



「どうしたのサイ君…?」

「ごめん」

「え?」

「その、どうしたら良いか、わからないんだ。こんな感覚は初めてで」



私の首もとに唇を這わせながら呟いたサイ君。
さっきまで私のそれと絡めあっていた彼の舌でチロチロと首を舐められ、思わず身体が震えた。



「気持ち良い?」

「…う、ん」

「良かった」


するとスッと彼の手が下に伸びた。どこにいきつくんだろうと考える隙もなく、サイ君の手はなんと私の股間へたどり着き、わたしは慌てて首を振る。


「サイくん、駄目なの、あのね」

「僕、もう止まりそうにないよ。これ、どうにかしたくて」


彼は私の太ももに硬くて熱いそれを擦りつけて、はあと苦しそうに息をした。
受け入れてあげたかった。だって嬉しいんだもん、私とそういうことしたいって思ってくれてるなんて。
大好きなサイ君と、うん、嫌じゃない。

だけど、それでも、断らなくちゃいけない理由があるのだ。


「わたし、今、生理だからっ」


私の秘部を下着の上からなぞっていたサイ君の手が止まる。



「生理って月経のこと…?」

「…うん」

「…確か、あそこから血がでr「ダメダメダメ言っちゃダメ!」


慌てて彼の口を手でふさぐ。
よかった、空気を読まずに純粋に言葉をこぼす彼はいつものサイ君だ。
頭のどこかでホッとしながらも、恥ずかしさと申し訳なさで胸がいっぱいでどうしたら良いかわからなくて、彼の口をふさいだまま黙って見つめあった。


「…」

「…」

「生理の時は、セックスしちゃいけないのかな?」

「うん(は、恥ずかし…!)」

「なんで?」

「衛生的によろしくないし、生理の時はばい菌が入りやすくて病気になりやすくて…」


顔を真っ赤にしてしどろもどろに答えるとサイ君はふぅんと呟いた。
ど、どうするんだろう…?冷や汗を流しながらサイ君を見つめていると彼は私を抱き起こしてぎゅっと包み込むように抱き締める。
彼に応えるように恐る恐るサイ君の背中に腕を回してみると、尚一層強く抱き締められてなんだか嬉しい。


「僕、興奮してるみたいで、」

「うん」

「前からコマチと一緒にいると身体がムズムズして変な感じがして、こんなの初めてだったからよくわからかった」

「…うん」

「いろいろ調べてみたんだけど…なんか、タイミングが悪いっていうか、恥ずかしいね」

「…ふふ」



クスクスと笑っていると、サイ君も釣られるように笑った。
可愛いなあ、サイ君。その白い肌をほんのり赤く染めて目を細めるサイ君がいとおしくて、チュっと触れあうだけの軽いキスをしてあげる。


「あ」

「コマチが生理じゃ仕方ないけど…これはどうすれば良いと思う?」










(と、トイレは廊下出たらすぐ目の前だよ!)