忍少年と碧血丹心 105

◇ ◇ ◇

「いい…っ!!良すぎてもう…!!」

ある程度ラブホとして知名のある、比較的ひっそりと佇んでいる一室で、その行為はラストを迎えていた。
入ってから既に3時間は経過していて、暖房器具がなくてもその場は額に汗を浮かべてしまう暑さだ。
パンパンと―――何かが弾ける様にしてぶつかり合う音。
そして瑞々しい粘膜とそこから匂う雄のフェロモン。
薄暗いその部屋の構造は、さながら高級ホテルを思わせる広さと家具の質の良さがうかがえる。

「あっ…あっあっ、あんっ!!いいよ…いいっ!!」

両足を抱え上げられ、そこに雄が何度も入りこむ。
少年は全裸だったが、攻め入るその男はファスナーを開けて肉棒を出している以外、どこも乱れてはいない。
ただこの異常な暑さに汗は滴っていた。

「来て…っ!もっと来てっ!」
「はん。淫乱だな…!!」

「いいっ!!もっとぉ!」

甘い声で泣きながら、懇願する少年の顔はくしゃくしゃになりながらも愛らしいものだった。

涙で濡れ、許してとすすり泣くその姿を、是非とも『奴』に置き換えてやってみたい―――

想像しただけで腰にずっしり来るものがあり、おいしい獲物を見つけたようにぺろりと唇を舐める。
その一方、激しく抱かれている少年は思ったものだ。
この熱い眼差し―――これは自分に注がれているものではないと。

「『キン、グ』っ。セフレじゃなくて、愛人、出来たって…本当…っ?」

喘ぎに交って聞こえたその疑問に、『キング』はぴたりと動作を止めた。

「やぁ…、やめないでぇ」

それに物足りなさを感じたのか、自分の反った可愛い『物』を誘う様に男の腹に擦りつけ、腰を揺らして男の雄を甘く刺激する。
それだけで、この少年がこういった背徳的な行為に慣れていると分かった。
しかし『キング』は動かなかった。

「―――さぁて。それは初耳だな…」
「―――…。本当に愛人、出来てないの…?」

「愛人?…あいつは愛人ってタマかよ」

それでも、少年は悟った。
『キング』の中に、その噂の誰かがいる。
それに嫉妬さえして、少年は震える唇をかみしめた。

「ねぇ…僕、もう用済みになっちゃう?」

今にも泣きそうになりながらそう首をかしげて訪ねてくる。
それも一種の誘惑術なのだろう。
しかしあえて『キング』はそれに乗った。

「…お前の体を手放すのは、まだおしいな」

それだけでまだ捨てられないと悟ったのか、その顔を喜びに輝かせる。

「その人、僕より可愛いの?」
「いいや。可愛さで言えばお前の方が上だな…」

「それじゃ、美人とか…?」
「ああ。美人だろうな」

「『キング』は、その人の事…好き…?ってそれは愚問かな?」
「―――さぁて。どうだろうなぁ。組み敷いて泣かせてやりてぇ。ただそれだけだ…」

「ねぇ…なんで、笑ってるの…?」

少年は、泣きっぱなしで声がかすれている訳ではなさそうだ。
慄くように体を震わせているのは、何を考えているのかが全く分からない―――そんな獰猛な笑みに少しばかり恐怖を感じていからだろう。

文字通り『キング』は、笑っていた。
口角を釣り上げて、今にも牙を立てて少年の細い首筋を噛み切りそうな不穏が漂っている。

「さぁて…なんでだろなぁ」

垂れ下った金色の前髪をかき上げて―――しかしそんな姿も何て絵になる男なのだろう。

「ああっ!!い、いきなりっ」

突然と再び孔に向かって深く侵入してきた異物に、少年の体は跳ねた。
非難するような口調の割には喜んでいる様にも見える。
それを見つめながら、『キング』はその少年に告げた。

「…思ったより、その噂とやらが嬉しいようだ…」

果たしてその言葉を、快楽に狂う少年の耳に届いたかは定かではないが。



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