後話
麦藁の船に乗せてもらってから一週間が経った。
私は自由に行動することを許されているので、甲板へ出ると。
そこにはいつもの腹巻きではなく、前の開いた服を着てゾロが1人甲板の床で寝っ転がっていた。
今日は一応起きているみたいだったから、私はゾロへと近寄って上からを覗き込んでずっと気になっていたことを聞くことにした。
「前から気になっていたんだけど、ゾロの腹にある大きな傷はすごいな。その傷は誰にやられたんだ?」
まるで一方的な剣による傷あとに私は疑問に思っていたので聞くと。ゾロは嫌そうに顔をしかめながらも答えてくれた。
「鷹の目だ」
「へ?!鷹の目って、もしかして鷹の目のミホークか?七武海の?」
「ああ」
あまりにも予想外の大物に私はすごく驚いた。
だって鷹の目だ。剣士なら知らない人はいない最強の剣士だ。
かく言う私も彼にはすごく憧れていた。
ゾロにも勝てない私の今の実力では負けること必須だろうから勝負は仕掛けないが、会ったら影からこっそり見たいと思っている。
これがそんな鷹の目から受けた傷だったなんて。
「ななな…なんだと!?なんて羨ましいんだ、このやろう!私も会ってみたい!傷を受けたということは戦ったのか?」
「………そうだ。だが、おれはこの通りあいつに負けた。次は勝つ」
「はぁっ!!?戦っただと!?羨ましい」
ゾロは対抗心……というのか?
私はあまり言葉がうまくないので、的確な言葉が浮かばないが……リベンジに燃えているようだ。
けれど、それより私は鷹の目と戦ったという方が衝撃的だった。
彼と戦えたこともそうだが、戦って生き残ったゾロもすごいな。
見られるのならぜひその戦いを見てみたかった。
……きっとかっこよかったのだろうな。
私も何度でも死ねるのなら、死ぬ覚悟で戦えるのなら戦いたい。
一度しか死ねないから戦いを挑むとしたらもっと強くなってからになるけど。
とにかく、鷹の目と会ったことのあるゾロになんだか悔しさを覚えた。
それだけではない。ゾロの腹に傷を付けた鷹の目に対しても、私は羨ましいと思った。私の実力ではつけることはできないから。
私はゾロの腹に残る鷹の目に付けられたという今は無防備な傷あとを、微妙な力加減で撫でてみた。
手触りとしては傷あと独特の皮膚が張った感触がする。
私が撫でると驚いたゾロは立ち上がろうとしたから。
私は手に力を入れて、片膝を体に乗せてゾロが起き上がれないようにした。
「〜〜〜っっ!?傷を撫でるな、くすぐってェだろうが!!」
ゾロはすごく嫌がっているので、私は嬉しかった。
思わず口がにやけてしまう。
「なんだ。こんなことでくすぐったがってたら鷹の目に勝てないぞ。我慢しろ」
「意味分からねェよ!だいたいてめェ、その手つきわざとやってんだろうが!どけっ、この糞ガキ」
私はゾロがガキだと言う言葉にムカついた。
だいたい彼は私にはガキと言うくせに年の近いナミにガキと言ったところを見たことはない。
胸か?胸のせいなのか?
「ガキじゃない!私はこれからボン、キュッ、ボンなセクシーガールになるんだからな!!」
「つまり今はガキじゃねェか」
「うるさいっ!そのうちナミまでとは言わなくても、ゾロより大きくなるんだからな!覚えておけっ!!」
「おれにまで対抗心を燃やすんじゃねェよ!!?」
それからこの言い争いはサンジが夕飯に呼びに来るまで続いた。
……とにかくまあ、ゾロの腹の傷について知れてスッキリした。
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