水曜日の午前4時44分(ハリポタセドリック夢)
2019/07/05

ハッフルパフの同級生ではあるけれど、方やクィディッチのシーカーで魔法対抗試合の代表選手、方や成績は下から数える方が早い私という雲泥の差があるセドリック・ディゴリーとは話すこともほぼほぼ無かった。
 別に嫌いという訳でも逆に好きだということも、いや、どちらかと言えば人の良い彼のことはライクとして好きだったけれど。それくらいだ。

 そんな私だけが彼を視れるというのは運命というのは何ともままならないものだと思う。


 セドリック・ディゴリーは死んだ。

 魔法対抗試合の最後の課題でハリー・ポッターと共にゴブレットで飛ばされてヴォルデモートに殺されたのだ。
 試合の後ダンブルドア校長がセドリック・ディゴリーを忘れるなと言っていたから確かのはずだ。

 それなのに、なぜ。


 それは、セドリックが死んでしまってから少し後の事だ。
 ハッフルパフでは特にセドリックを偲ぶ人が多かったから、眠るのが怖いという人がたくさんいた。
 私の友達もその1人だった。

 だから私はその子に付き合って夜遅くまで起きていたのだけど、やっと眠る気になった友達が女子寮へ戻るということで、私は何となくまだ談話室に残ると言い、人がいなくなって暖炉の火のパチパチという音だけが響く部屋に残った。

 そこで何となく1人の時間をソファーで満喫しながら、セドリックの事を思い出した。

 彼は本当に人気者だった。そんな彼が死ぬのなんてなんて勿体ないことなのだろうと思った。
 夜のせいか少し頭の中がネガティブになっていたんだと思う。

 「セドリックじゃなくて私が死ねば良かったのに」
 「そんなことを言ったら駄目だよ」

 突然返ってきた言葉に私は驚いて声の方向へ振り向いた。
 振り向いた先には私と目が合い私以上に驚いた様子の半透明なセドリックがいた。

 「せっ、えっセドリック?」
 「◯◯、君は僕が視れるのかい?」
 「え、これ夢?私もう寝た方が良いかもしれない」
 「◯◯、夢じゃないと思うからちょっと待って!」
 「グッドナイト、ハブァアナイスドリーム…」
 「本当に待って、今が最後のチャンスかもしれないから」

 絶対これは夢だと思ったけど、幻覚だとしても同級生の必死なお願いに私は眠ることを止めた。

 「仕方がないから後3分は起きてるよ」
 「ちょっと短いね。けど話を聞いてくれてありがとう。やっと僕の事が視れる人ができて嬉しいよ」
 「私以外には視れないの?まあそうか、そうじゃなきゃ大して仲良くもなかった私をこんなに引き止める訳がないか」
 「なんだかその言い方、罪悪感が生まれるね。確かにあまり話したことはなかったけど何故か◯◯は僕が視れるんだね」
 「ねー。もしかしてセドリックは今ゴーストなの?」
 「そうなのかな?でも同じゴーストには僕のことを分かって貰えなかったよ」
 「じゃあ神か?」
 「そんな大層なものではないよ。ただ彷徨うくらいしかできることはなかったし」
 「ふーん」

 ゴーストでもなくてゴーストには見えなくて私は視れる。
 不思議だ。

 「そっか。そしたらせっかくだし両親とか友達とかチョウに何か言付けでもある?セドリックの言う通りセドリックと話せるのは今しか無いかもしれないし。伝えておこうか?」

 昨日の夜にセドリックにこんなこと言われたんだーって話しても信用されなかったり夢じゃないのかとか怒られたりする可能性は高いけど、まあ私にしかできないのならしようと思った。

 けど、私の提案にセドリックは顔を曇らせた。

 「確かに伝えたいことはたくさんあるよ。僕を思って泣かないで、とか愛しているよとか、たくさん。でもそれは君を通して伝える事とは違う気がするんだ」
 「セドリック」
 「本当なら生きているときにたくさんの事を伝えておくべきだった」

 セドリックは泣きそうな様子でそう悔いた。
 生きている間に、人はあまり自分が死ぬことを考えないから生きている間に余裕があると思ってしていないことは誰でもたくさんあると思う。でも。

 「セドリック、あのさー」

 私は息を吐いた。

 「そんなんだから伝えられないんだよ。あのときああしておけば良かったなんていつでもできるの。それよりそう思わないために今やっておかなきゃ。自分から伝えるものって誰が決めたの?とりあえず、今できることは今やろうよ。大丈夫だよ、私は殴られるくらいの覚悟をしてあげるから」

 だから、伝えたい人に伝えよう。と言うとセドリックは綺麗な涙を流した。初めて視たセドリックの涙だった。


 その次の日、私はセドリックに言われた言葉をみんなに伝えた。
 もちろん適当なことを言うなとか、お前の妄想だろとか人を泣かせたりしたけど、中にはありがとうとお礼を言ってくれる人もいた。

 こうして私はセドリックの言葉を伝えて、もうセドリックを視ることはなかった。


 となると思っていた。


 しかしそんなことは無かった。
 セドリックと会った一週間後の夏休みになり夜実家で熟睡している時、「◯◯、◯◯」と名前を呼ばれた。

 うるさいなあと思いながら起きてみると私のベッドの横には一週間前と変わらず半透明なセドリックがいた。

 「なるほど、夢か」

 そう断言して私が再び布団を被ると「相変わらずに夢だと思い込もうとするね」と呆れながらも寝かせまいと私の名前をセドリックが呼び続けたのでしばらくして、私はギブアップした。


 こうして週に一度の深夜から早朝にかけての私とセドリックの会合は末永くツヅクことになるのだった。



※※※※※※※
 誰にも視れないスタンド…幽霊?としてセドリックと関わっていく話。
 
 夢主がセドリックに素っ気ないのはたぶん真面目になるとやっぱり悲しいから誤魔化すため。

 ちなみにセドリックは視れない間も夢主のそばとかに存在しています。

 仲良くなってそのうち相思相愛になれば良いのにな。

 救われない感じもするけど、夢主が死んだ後ゴーストカップルになってもいいし。ミラクルで子供は作れてもいいし。

 普通とは違うけれど、そうでなければ出会わなかったのなら私・僕はこの運命を選ぶだろうって、本人たちが幸せならそれでいい。



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