Theme:FT
スティナツ擬き
■スティング十五歳、ナツ五歳のある日

だいきらい、と拙い言葉でも言われたら、いくらなんでも傷つく。しかもそれが、目に入れても痛くないほど溺愛している、俺の愛弟なら尚更だ。
「ごめんね、俺テスト期間中でさ――」
「つぎはやったときはいいわけしないっていった!」
今にも涙が溢れそうな金色の瞳が、こちらを睨む。
女にも負けない、大きな猫目の端が、興奮で赤くなっている。
今すぐにでもスマホを取り出して撮ってしまいたいところだが、そんなことをしてしまったら、可愛い弟は今以上に臍を曲げてしまうだろう。今俺がすべきなのは、愛しい桜のご機嫌取り。
「ホント、ごめんね。次こそ言い訳もしないから」
「ぅー……」
いよいよ決壊した涙腺から溢れ出る水も、制服に着くことを厭わず抱き込めば、多少不機嫌な声が漏れるものの、大人しく腕の中に収まって。
ウチの子は天使か、と叫びそうになるのをどうにか喉元で抑え、
「――お詫びに、一週間 ヒーローごっこ付き合うから――」
言えば、一拍ほどおいて、可愛いナツは漸く腕の中で破顔したのだった。

■約束破り 
at 4/10 8:29

Theme:FT
スティナツ
早く大人になりたい、と見た目より実は年上の、童顔な恋人がボヤいた。
「なんで?」
一つ年上の高二になるこの人。進路が決まるこの季節、逆に大人になりたくない! なんて騒ぎ立てる方だと思ったのに。
「今、失礼なこと考えたろ」
「いーえ、めっそーもない!」
納得いっていない表情が、俺の方を向く。
「で、なんで大人になりたいの?」
怒られる前に切り返すと、ナツさんは少しだけ口籠った。
けれどそう経たない内に口を開いて、爆弾投下。
「大人になったら、AVのやり方? 教えてやる、って言われたから」
純粋百パーセントで出来ているかのような、ナツさんの唇から放たれたAVという言葉に、思わず吹き出しそうになる。
誰に、と地を這うように出てしまった低音の問いは、戸惑うかのようなアルトで、グレイ、と小さく答えられた。
また、またあの人か!
拳を作り怒りに体を震わす。
ナツさん大好きなあの人は、こうして何度も手を出し口を出してきては、純粋なナツさんに下品な言葉を教える。
っていか、ヤり方って何だよクソ野郎!
「……ちなみにさ、AVってなんだか知ってるの?」
「父ちゃんに聞いたらアニマルビテオの略だって聞いたぞ!」
だからやり方って言うのは、動物の世話の仕方とかそういうのだよな! 俺、猫飼ってるし丁度良いかもって!
――イグニールさん、グッジョブ。そして、お疲れ様。
純粋無垢な愛息子から放たれた爆弾に、さぞ困惑しただろう。なにせその様に育てたのは彼で、猥雑な世の中から守ってきたのも彼なのだから。
「ねえ、イグニールさんに誰からAVって言葉聞いたか、言われた?」
「? 言われたから答えたー」
何を聞くのと言わんばかりに、率直に応える。なるほど、なら俺はあの男に手を下さなくても良さそうだ。
――言わずとも、偉大な父が彼を殺ってくれることだろう。
「なあ、スティングはAVのやり方って知ってんのか?」
聞かれて、数秒の間。
……そういえば、そういう関係になって、もう半年は経っただろうか。
健全な男子高校生にしては、耐えた方だろう。だから、ご褒美くらいくれてやってくれ。
「もちろん、知ってるよ。大人じゃなくても、知ってる人はたくさんいるよ?」
一つ年下の男が知ってることに愕然としたのか、目を見開いている。
こちらとしては、AVという言葉を知らない彼の方が貴重なのだけれど。
「教えてあげようか? 実践つきで」
「マジで?! 教えてくれ――って、実践?」
イエスはちゃんと頂いた。
そもそも、彼氏の家でこの会話をしてる時点で、ナツさんの負けだ。
自宅デートと称して、彼氏の家のベッドで寝転がる恋人。
明日は土曜日で学校は無く、俺の父親とイグニールさんはそろって出張だ。来週まで帰ってくることは無い。
――これ以上の据え膳、あってたまるか!
「ちょ、待て待て待て待て! 実践って、な――」
「ほら、早く大人になりたいんでしょ?」
仰向けのナツさんを押さえつけながら、未だ子供体温を忘れぬ唇にキスをした。

お題■大人になって、それからどうするの 
at 4/4 0:23

Theme:FT
スティナツ
「だああッ! もう、付いてくんなこの変態! 変質者! ストーカー!」
「えー良いじゃん。だって好きでしょ、俺のこと」
「す、きじゃない!」
「嘘つき」
「ぅ、そじゃ、ない」
「前世って信じるタイプでしょ?」
「そういう風に見えるか?」
「ハハ、お世辞にも見えない!」
「なんか腹立つ」
「ごめんて! っでも、初めて会った時からビビッ、て来たんだってば! こう――直感みたいのが」
「俺には関係ねーだろ!」
「関係あんの、超有り! 昔っからナツさんの夢見てたんだって! 桜色で――赤くて――金色で――あと白いマフラー!」
「ゆ、夢の中でさえ俺のことストーカーしてたのか!」
「そこは前世の――みたいにときめいてよ!」
「ときめくか電波男!」
「電波じゃねぇーって! 前世だよ、前世!」
「じゃあ前世からずっとストーカーってことだな!? この粘着質男ッ」
「あーもう怒った。俺 怒りましたから! こうなったらその通りに付き纏いますからね」
「う、ウワアア」

お題■運命なんて、くそくらえ 
at 4/3 22:40

Theme:FT
スティナツ
「駆け落ちしちゃおうか」
そんなコンビニ行こうかみたいな軽さで言われても。
「だってナツさん抜きで幸せになれとか、無理。考えらんねえ」
ふうん。
「ちょ、そっちこそ軽くね? ――一応、プロポーズだよ? 幸せにするよ。ま、駆け落ちなんて波乱万丈だけどね」
……俺は、
「うん?」
お前となら、幸せになれなくてもいい、なんて。 
at 4/2 9:5

Theme:FT
スティナツ
■四十五秒以内の逢瀬


缶コーヒーと、適当な弁当を一つ。弁当は電子レンジでチンできるやつ。そうじゃなきゃ一目惚れしたあの人と少しの会話もできやしない。
「こちら暖めますか?」
綺麗な桜色がこちらを窺う。はい、と答えて二十秒間。このコンビニに通いつめて二十日目。
「いつもお弁当なんだな、ですね」
初めて彼が業務外での言葉を吐いた。どうやら敬語が苦手らしい、なんて新たな一面に心底ときめいた自分は末期。 
at 4/1 9:0

Theme:FT
スティナツ
■無理をするのは得意

オレとまだ付き合いたいなら、二三、条件がある。その一、人目憚らずキスしないこと。その二、稼いだ金をオレに送らないこと。その三、……無理して仕事しないこと。
「倒れたって聞いて、血の気引いたんだ……この馬鹿野郎」
そっちこそ無理してお見舞いなんて来て。……なんて言葉は野暮だとわかっているから、俺はただ頷いた。 
at 3/30 22:0

Theme:FT
FT/グレナツ擬き
■救いを抱いた夜

「……なんだよ、離せよ」
「むりだ、いまは、ちょっとだけ……ほんのちょっと待ってくれ。たのむ」
「巫山戯んなよ、」
「………」
「いっつも、勝手にベタベタしてきて」
「……ああ」
「いっつも、オレのことばっか心配して」
「ぅん……」
「オレが、そーゆーの拒否できないの知ってて、」
「そうだな、……」
「……狡い」
「……俺は、狡い男だな」
「知ってんだよ、バーカ」
「そんで、とんでもねー馬鹿だ」
「今更!」
「……気付くのが、遅すぎた」
「………」
「でも俺、前に進まなきゃなんねえ。前を見なきゃなんねえ。じゃねえと示しが、俺の償いが」
「それって、そんな必要か?」
「必要。必要とか、そういうんじゃねえだろ」
「じゃあ、示しとか償いも違うな」
「うるせ、お前にはわかんねえよ」
「わかんねえ奴に甘えてくんなよ」
「……うるせえ」
「……。必要に、されてんのか?」
「……ぁ?」
「示しとか償いとか、お前の大事な人たちに、必要とされてんのか?」
「………」
「それって、自己満足って言うんだろ。お前から聞いた話だと、お前の大事な人たち、すんげえカッコよかった」
「………」
「示しとか償いとか、小難しいの嫌いそうな、とんでもなくカッコいい人たち。お前にも、いんじゃん」
「……ん」
「泣きたいときゃ、泣けよ」
「………」
「父ちゃんが言ってた。涙は時に、嫌なもの全部持って行ってくれるって」
「……へ、ぇ」
「俺だけじゃ何もできないけど、きっとそれが、お前を救ってくれるから」
「……、……やべえ」
「なにが?」
「オレの大事な人等、全員カッコよすぎんだろー……」
「ハハ、ホント今更だな。バカグレイ」
「そうだなあ……」 
at 3/28 8:7

Theme:FT
FT/スティナツ
■お腹いっぱい君をください

たくさんの食べ物を、頬一杯に詰め込んで幸せそうに笑う姿は、さながら小動物。ハムスターの様だ。思いの外 細くしなやかな身体に、どうやって入るのと聞きたくなるほど簡単に、食べ物が消えていく。
見てるだけで腹一杯になる目前の状況に、俺はただ一言。
「やっぱかぁわいいなぁー」
途端に食すのを止め、彼は照れ隠しのつもりにと赤い顔を顰めた。

幸せな気に包まれて、俺はコーヒーを一口。 
at 3/26 22:46

Theme:FT
FT/スティナツもどき
「俺、ナツさんをこんな目に合わせる世界を創った神様なんて、ぶっ殺すよ」
延々と燃え続ける、醜く肥え太った人間だったモノを蹴り飛ばす。
「無理に決まってるだろ、スティング」
何時だって純粋で真っ直ぐだった金の瞳は、俺を見ていない。
「だってさ――」
「だってもなにも、」
程よく筋肉の付いていた腕や脚は、同年代のそれらより細くなっている。
「だってもなにも――神様なんていねーんだから」
無理だよ、そう言う彼の笑顔を捕って行ったのは誰だったか。

お題■神様なんていない 
at 3/22 18:47

Theme:FT
FT/スティナツ
貴方はスティナツで『ゼロ距離告白』をお題にして140文字SSを書いてください。
shindanmaker.com/375517



間抜けな効果音を放ったのは、手元のスマホ。要因はSNSによるものだった。
画面に表示された通知をタップし、SNSを開く。
「ちょ、ナツさんマジで?」
「マジもマジ、大魔神だぜー」
目の前にいる、大好きな恋人からのメッセージ。

『キスして?』

可愛らしい告白に、液晶の壁なんていらない。


■136/140字
うーん、いかんせん140字に収めようとするとわかりにくい……
まだまだですね 
at 3/21 22:13

[前] [次]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -