雨模様 | ナノ
第7話

同年代の人と話すのは本当に久しぶりだったけど、思ってた以上に私は会話が下手だった。吃るし、詰まるし、言葉も出てこないし。言いたいことは頭の中にちゃんとあるのに口に出そうとすると全然上手くいかない。

接客業じゃないから話下手で困ることなんてなかったけど、今日初めて上手く話せないことをもどかしいと思った。見ず知らずの私を助けてくれた彼に、もっとちゃんとした言葉で御礼が言いたかった。

「謝んなきゃなのはこっち」

そう言われた時は本当に驚いた。私の態度が悪かったせいで彼にあらぬ誤解を与えてしまっていたなんて。だけど相手から見る私は目も見えなくて、口元も見えなくて、表情も全くわからない上に言葉も上手く話せないやつなんだ。誤解を招いても仕方ないのかもしれない。私のせいで相手に嫌な思いをさせるのはすごく嫌だ。

「(マスク…とってみようかな…)」

サングラスは私の目線が落ち着かず揺れることを隠すのに必須だからどうしても外したくない。マントも私の普通さを隠す大事なアイテムだ。でもマスクなら外せるかもしれない。これは誰とも話したくないっていう意思表示になればと思ってつけてきたものだ。でも今の私は、もう少し人とうまく話したいと思っている。……よし、外してみよう。

ジリリリリ

「!」

マスクを外した直後のこと。ベルの音が会場中に鳴り響いた。それは受付時間が終了して、本格的にハンター試験が始まる合図だったようだ。

一次試験の試験官がいつの間にか私の頭上のパイプに立っていて、壁に空いた小さな空間に私たちを導いた。先頭を歩くのは嫌だったけど、私が最もパイプに近かったから仕方なく一番に中に入る。広い。試験官は私たちが全員入ったのを確認すると同時に、物凄いスピードで歩き始めた。

「申し遅れましたが私一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」

一次試験の内容は二次試験会場までサトツさんに着いていくことのようだ。大きく息を吸って、私も小走りでサトツさんの後を追った。




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