雨模様 | ナノ
第47話

「あ!戻ってきた!おーーい!」

私たちの姿を見つけたゴンがこちらに向かって走ってくる。別れた場所の近くで時間を潰していてくれたみたいだ。

「大丈夫だった?」と心配そうな顔をする優しいゴンにハンター証を見せると「よかったぁ…!」と笑ってくれた。

「あとはお金だけ稼いで、渡したい…」

「はぁ!?お前まだそんなこと言ってんのかよ!」

「これは、けじめ…みたいなもの…だから」

今まではそれ以外に生きる理由が見つからなかったけど今は違う。育ててくれた恩をお金で返して、それから先は義父たちとは違う生き方を選びたい。

そう伝えると2人は驚いたような顔をしたけれど、すぐに顔を見合わせて「そうしよう!」とにっこり笑ってくれた。自分の考え方を肯定してくれる人がいるって、こんなに心強いんだな。

「このあとどーすっか」

「え?せっかく揃ったし遊ばないの?」

「お前なー!今のまんまでほんとにヒソカを一発でも殴れると思ってんのか!?半年どころか10年経っても無理だっつーの!」

キルアはどこからか木の枝を拾ってきて、ゴンとヒソカの間にある戦闘能力の差を描き始めた。

ヒソカとハンゾーの差は少しだけど、ゴンは2人よりは遥かに弱くて、キルアはその中間くらいという見立てだった。私はキルアはハンゾーよりも強いような気がしていたのだけど、贔屓目なのかもしれない。

「ハルはどのくらい?」

「あーーこいつなぁ…」

2人の視線がこちらに移る。いつのまにか話題は私の強さのことに変わっている。

「弱そうだけど多分かなり強いよ。このへん」

そう言いながらガリガリと地を削った場所は、キルアと全く同じところだった。「へぇ!」と感心するゴンにあらぬ誤解を与えてはいけないと思い慌てて訂正を入れる。

「待って、私、そんなに強くない」

「いーーやウソだね!さっきオレは本気であいつを殺ろうとしたんだ。でもお前に止められて少しも動けなかった。隠してるのかもしんねーけどお前ホントはかなり遣り手だろ」

終わりに額を弾かれて「いたっ」と声を上げる。あれは必死だっただけだ。キルアみたいに場慣れしていないし、ゴンみたいにセンスもない。しかしそれを言っても信じてもらえそうになかったので、もっと修行して期待を裏切らないよう強くなろうと誓って口を閉じた。

「まぁなんにしてもヒソカは相当強い。並大抵のことじゃ半年で一矢報いるのは無理だ」

「うん!」

「ゴン、金はあるか?」

「うーん…実はそろそろヤバい」

「オレもあんま持ってない。そこで一石二鳥の場所がある。天空闘技場!」

キルアは近くのパソコンを弄って、天空闘技場のページを見せてくれた。世界第4位の高さを誇る建物で、ここからは飛行船で移動しなければならないみたいだ。

「ここなら金も稼げるし、ハルにとってもちょうど良いしな」

「あ、…うん、そう、だね…ありがと」

当たり前のように私も一緒に行くことになっていることに驚いて反応が遅れてしまった。キルアにはバレバレだったようで「いちいち驚くなっつの!全部付き合ってくれんだろ!」と呆れたように笑っていた。

「船を降りたらゼロからの出発だな」

「うん!」

「行こう!」

「うん!」

元気なゴンの声に合わせて、私も力一杯頷いた。




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