雨模様 | ナノ
第1話

「ハンターになるまで帰ってくるな」

ある朝、そう言って義父は私を家から追い出した。

世間知らずの私はハンターという単語を聞いたのもその時が初めてで。どうしていいかわからず藁にも縋る思いで雇われ先の主人を尋ねると、物知りな主人はハンターになるまでの道筋を教えてくれた。彼の言葉を必死にメモする私を見て主人は「いつものことだけど断るって選択肢はないのか?」と不思議そうに首を傾げていた。

私は誰からも愛されていないし必要ともされていない。邪魔者なのはわかっているけれど、それでも今いるこの狭い世界は守らなければならない大事な居場所だった。胸を張って幸せとは言えなくても私はここに帰りたい。主人に仕事を休むことへの謝罪をすると「お前ひとりいなくてもどうにでもなる」と言われて少しだけ悲しくなった。私はここでも必要とされていないのか。

それからすぐに街に出て主人のくれた情報を頼りにハンター試験の会場を探しはじめた。試験会場は一般に知らされておらず、数少ない情報をもとに自分で辿り着かなければならない仕様らしい。その過程で知らない人と話さなければいけないのは辛かったけど、奇跡的に試験会場に辿り着くことができた私は受付で渡されたナンバープレートを見て驚愕した。

「(1番……)」

会場内には誰もいない。もしかして壮大なドッキリに引っ掛かってしまったのだろうか。…ううん、義父がそんなふざけたことをするはずがない。これからどんどん集まってくるのだろう。

しばらくすると少しずつ会場に人が入り始めた。試験自体が嘘ではなかったことに安心しつつも徐々に増えていく人たちに胃のあたりが痛くなってくる。なるべく人に気付かれないように隅の方で体育座りをして試験開始を待つことにした。

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