日常 | ナノ
82日目(木曜日)

今日は1日休みだったので境内を掃除したあと肥料を買いに町に繰り出したのだけど、そこで信じられないことが起きた。あの時間だけ夢なんじゃないかと思ってしまうレベルで信じ難い光景だったけど手元に残っている激辛煎餅が現実だったことを証明している。日記に書いておこう。

ヘドロさんのお店を出たところでばったり沖田に出くわしたのだ。隣には極上の美女がいたので彼女かと思ったが後から話を聞いたところ沖田のお姉さんらしい。沖田は私を見た瞬間すごく嫌そうな顔をしたので他人の振り(そもそも私たちは赤の他人なのでフリではないのだけど)をしてほしいのだろうと思って素通りしたのだが、少し歩いたところで物凄い強さで腕を掴まれ「ちょいと…顔貸してくれやせんか」と苦虫を噛み潰したような顔で言われてなんでこんな嫌々誘われなきゃいけないんだと苛立ちを覚えたがやけに必死そうな態度が気になって「わかりました」と返事をしてしまった。

移動中に「これから見ることは全部忘れろ。お望みなら直々に忘れさせてやらァ」と言われて何でこっちが付き合う側なのにボコられる宣言されなきゃいけないの?とさらにイラッとする。しかしその直後「姉上!この人がさっき言ってた2人目の親友です!」と見たことないような笑顔で紹介されて「はあ!?」と大きな声を出してしまった。沖田はどうやら、この綺麗なお姉さんに頭が上がらないらしい。

のちに沖田から聞かされたのだが、お姉さんは沖田に同年代の友達がいないことをすごく心配していたようだ。余計な心配をかけたくなくて苦肉の策として私の名前を挙げたら想像以上に興味を持たれてしまい、私が勤めているコンビニに行った帰りで偶然歩いている私を見つけたらしい。一瞬知らぬフリをしようとしたけどやっぱりお姉さんの喜ぶ顔が見たくて声をかけたのだとか。お姉さんと接している時の態度は普段の沖田とだいぶかけ離れていたけれどその表情はとても幸せそうだった。やつも人の子だったんだな。

お姉さんに「これからもそーちゃんをよろしくね」と渡された煎餅を家に帰って食べてみたら死ぬほど辛くて盛大にむせた。ああ、お妙さんもそうだけど綺麗な人って一筋縄じゃいかない何かを持ち合わせているんだな。親友じゃないのもバレちゃったし綺麗で聡いなんて素敵すぎる。そんなお姉さんに絆されて、彼と友達になれるよう頑張りますとか言っちゃったんだけど実現できるのだろうか。あ、そういや沖田に今日のこと忘れろって言われたのに日記に書いちゃった。ま、バレなきゃいいか。結構頑張ったのに別れ際に「棒演技ご苦労様」って言われたのまだ根に持ってるからな。寝よ。




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