日常 | ナノ
71日目(日曜日)

今日は日帰りで宇宙旅行に行ってきた。やたらと豪華な宇宙船で、やたらと豪華な装いをした方々の中に混ざって、やたらと豪華な食事をしてきたのだけど、あれは本当にあんなに軽いノリでもらっていい券だったのだろうか。とんでもなく高かったのでは…。お兄さんにお土産は買ってみたけどこんなもので満足して貰えるのだろうか。かき集めた宇宙の砂も一緒にあげた方がいいのかな…でもこれ記念だし…私の手元にも置いておきたい気持ちもある…だけどお世話になりっぱなしだしなぁ…。いつかまた会えたら本人に聞いてみよう。

旅行はすごく楽しかった。これ以上ないくらい贅沢をさせてもらったし、なによりこの星を外から見れたことに思った以上に感激してしまった。宇宙には見たこともない花が咲いていたり、見たこともない生き物が住んでいたり、暑かったり、寒かったり、とにかく不思議なことが沢山だった。カメラを持っていなかったのでスケッチブックと色鉛筆を持って行ったのは正解だった。下手なりに色々記録できて楽しかった。

あ、そう、私はてっきり一人旅だと思っていたのだけど本来そうではなかったみたいで、宇宙船の入口付近で券をくれたお兄さんが待っていたのだ。「あれ?偶然ですね」と見当外れなことを抜かす私にお兄さんは可笑しそうに笑って「その券、よく読んだか?」とある一点を指差した。そこには「お二人様用」と書かれていて、そこで初めてお兄さんと一緒に行く予定だったことに気がついた私は「…どうしよう…お菓子足りないかも…」と呟いて更にお兄さんを笑わせてしまった。この人強面だけどツボ浅いよな。

しかし結局は1人で行くことになったのでお菓子のことは問題にならなくてよかった。「こっちで一悶着あってな…どうしても行けなくなった」と話すお兄さんの顔が疲れ気味だったのでその時に土産は疲労回復系の何かにしようと決めた。「大丈夫ですよ。元から一人旅のつもりだったので」と返すとお兄さんは何か言いたげな顔をしたが返ってきたのは「そうか」の一言だけだった。

その顔が少し寂しそうに見えて慌てて「宇宙行きたかったですよね…私だけ楽しむことになってしまってすみません…やっぱりお金」と背負っていたリュックを手元まで持ってきて探し始めたがお菓子が多すぎて中々財布を見つけられず「ちょっと待っててください」とその場に座り込んで本腰を入れて探していると、不意に頭に大きな手が乗りそのまま二度ほどぽんぽんとされた。びっくりして見上げるとお兄さんはすでに踵を返していて、追いかけようとしたのだが係の人に中に入るよう促されてしまって何もできなかった。

若干の罪悪感もあったけど豪華な船内を見た瞬間にそれも吹き飛び、すっかり満喫してしまった。明日休みだしお土産配りに行こ。




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