日常 | ナノ
50日目(日曜日)

今日はご褒美を探してかぶき町を彷徨っていたら酷い目にあった。どうしてこうなったのかわからないけど最近確実に沖田に遊ばれている。愚痴る相手がいないのでここに書き連ねようと思う。警察のことを誰かに愚痴るのは流石にまずいもんなあ…はぁ…

街を歩いていたら偶然隊服に身を包んだ沖田と遭遇した。無視して帰ろうとしたのだが、沖田は私の前に立ち塞がり、本日の主役と書かれたたすきを颯爽と羽織る。少しの間お互い無言で向かい合う。つっこまねーぞという目を向けてみたが伝わるわけもなく。テキトーに「誕生日おめでとうございます」と言ってみると「お、珍しく察しが良いじゃねーか」と満足気な顔をされてしまった。やばい。この人ガチで誕生日だった。

先日団子を奢ったばかりなのだけどまたこの人になにかしら与えないといけない流れになってしまった。やっぱりこの男、私をたぶらかして色々貢がせる気なんだ…この間もお人好しは身を滅ぼすみたいなこと言ってたし、私は色んな意味でちょうどいい相手なんだな…舐めやがって…相手の策略にハマるのは悔しいけど誕生日を無下にするわけにはいかない(こういうところにつけ込まれているのはわかっている)ので渋々「何か奢りますよ、500円以内で」と伝えると「酒が飲みてェ」と即答された。おいおいこんな真昼間からお酒かよ…本当お前ってやつは…

まあでもお酒なら安く済むしラッキーなんて思った私が馬鹿だった。あの時の沖田の顔は明らかに何か悪いことを考えていたしどうして気付けなかったのか。ばか…ほんとばか…浮かれた私は近くの店でお酒を買ってそれを沖田に手渡してしまったのだ。

「くれんのか?悪ィな」とやけに素直な沖田。嫌な予感がして「こんなもので良ければどうぞ。じゃあ私はこれで」とだけ伝えて踵を返したのだが、途中で腕を掴まれてそれも叶わず。振り向いた沖田の口角はニヤリと吊り上がっていた。

「白昼堂々未成年に酒渡すたァ…あんたも中々やるじゃねーか」沖田の言葉に目を見開く。この瞬間は一生忘れないだろう。動揺する私を他所に沖田がさらに続ける。「しかも相手は警察ときた。普通なら牢屋ぶち込まれても文句言えねーな」待て待て嘘だろ、まさかこいつ。「俺まだ十八なんで」そう言った沖田の顔は今まで見た中で一番輝いていた。

ここから更にゾッとする発言をされたので書き留めておく。ニヤニヤと楽しそうに笑う沖田を「…人のこと騙しておいて楽しそうな顔するのやめてもらっていいですか」と睨むと「普段能面みてェな面したやつが表情崩す瞬間って最高に興奮するだろィ」と返ってきたのだ。思わず「何それ怖い!!そんなん十八で目覚めていい性癖じゃないからね??!」と本音をぶつけてしまった。

今日はこれで逃げられたけど、これから先が不安だ。この人にこれ以上関わってはいけない。それはわかっているのにかぶき町で働いていると高確率で巡回中…いやサボり中の沖田に遭遇してしまう。どうしたらいいんだ…誰かに相談したい…神楽ちゃんなら話聞いてくれるかな。今度話してみよう。はぁ…もうかぶき町怖い。




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