日常 | ナノ
45日目(火曜日)

今日は衝撃的なことがあった。記憶喪失なんて漫画の中だけの話かと思ってたよ…。まさか、坂田さんが記憶喪失になっているなんて…。今日の昼休憩のときに、万事屋の3人がお店に来て、話してくれたのだ。最初は盛大なドッキリを仕掛けられているのかと勘ぐっていたけど、神楽ちゃんや新八くんが悲しそうな顔をしていたから信じざるを得なかった。昨日のクラクションの音、もしかして、あのときの被害者が…なんて考えたって仕方がない。

わざわざ上がる時間を見計らってもう一度会いにきてくれた坂田さんに何を言っていいかわからず「えーと…初めまして…の方が良いでしょうか…夕崎です」と頭を下げると、坂田さんはとても悲しそうな顔をした。言葉選びを間違ってしまったかもしれない。フォローの言葉を考えていると、坂田さんは私の手をそっと握り「すみません、夕崎さん。必ず貴女のことも思い出してみせます」と真剣な顔で宣言した。ぶっちゃけ私たちの間にそんなに思い出とかないけど大丈夫か?

感動的なシーンになると思っていたのだろうか。いまいち反応の薄い私を不思議に思ったのか、坂田さんが恐る恐る「あの…僕たちは恋仲だったんですよね…?」と首を傾げた。いやいやいや!!なんでそうなった??!とんでもない勘違いをしている坂田さんに「正直友達かどうかすらも危ういレベルの知り合いです」と真実を告げると「エッッ??!」と一瞬にして数メートルの距離を取られた。身体能力半端ないな。

それから「えっあっ、なんか…軽々しく手とか握ってすみませんでした…」と戸惑う坂田さんに「いいえ。早く色々思い出せるといいですね」と当たり障りのない台詞を残して家路を急いだ。

なんか記憶がなくなってもあの坂田さんなら逞しく生きていけそうだな。そんな風に思ってしまう自分もいるけど、朝の新八くんや神楽ちゃんの表情を思い出すと心が痛む。やはり一刻も早い記憶の復帰を願おう。父さんに頼んで祈願しといてもらおうかな…兄の祈願じゃ何の役にも立たなそうだし。頼んだよ、父さん。




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