ペーパースライス(消火後直後)

 すごいチーズが溶けて固まっていた。肉に挟まれたときの熱で原型がなくなってしまったんだろう。まるでマグマが固まったように、チーズが泡を出した状態で焦げていた。パンも肉とチーズの熱を受けて、ホッカホカになってる。ブラックペッパーのスパイスが効いた匂いも漂ってた。
「うわぁ。これが噂の」
「ヤベェな。もう今月分のが無くなるぞ」
「そもそも政府からの支給金が少なすぎるんだ。こっちは四人だぞ?」
「中々に迫力があるな。で、食べれるのか?」
「無理。分けない?」
「節約しねぇと、マズいか。削れるところは削らねぇと」
「だな。なるべく削れるところといったら」
「はぁ? お前なぁ、それだとパンズがパラパラになるし、チーズと肉が空中分解してしまうだろう?」
「うっ。上と下を分解して二つに切れば、いけるかと」
「食費か?」
「俺たちは削ってもいけるが、ボスにはなるべく食べさせたい」
「あのな、それだと途中で上の方をひっくり返さないといけないだろ? 途中でソースが落ちてしまうじゃないか。チーズも」
「そうだった」
「んじゃ、その方向で行こうぜ」
「あぁ。俺たちはまだギリいける方だからな」
「まぁ、食べれないようだったら、食べるさ。ほら、貸せ」
「うん、ありがとう」
「今まで食ってこなかった分もあるからなぁ。って、おい。ななし。オメェ、さっき注文したヤツはどうした?」
「リオにあげたよ」
「匂いと見ただけで満足するな。ちゃんと食べれる分だけを注文しろ」
「それをいったら、フライドポテトくらいだけど」
「お前たちもいえない立場だぞ」
 ジトっとリオがゲーラとメイスを睨む。二人はフライドポテトを頼んでいて、それぞれシェイクを飲んでいた。一方、私はハンバーガーである。でも食べれなさそうなのでリオに渡す。今日で二個目のハンバーガーを、リオは平らげていた。そのトリプル肉の三段も食べてしまうのか。その細い体の中に。
「人のことをいう前に、自分のを見直したらどうだ」
「んなこたぁ、いわれてもですねぇ」
「俺たちだってカツカツなんですよ」
「胃袋がか?」
「財布もっすよ」
「懐ともども、カツカツですね」
「フライドポテトの一本くらいは、食べれるけど」
 ヒョイッとポテトを奪う。それを食べていると、二人から「そうじゃねぇだろ」との視線が刺さった。そうはいわれても。一本だけでお腹がいっぱいになったので、ジュースを飲む。
「スムージーにしちまえよ。今度から」
「ただのジュースよりは栄養価が高いからな。野菜やら果物やらも入ってるし」
「その代わり、ドロッドロだがな」
「飲んだんだ」
 うぇっと嫌そうな顔をするリオに、そう思う。トンとメニューを指したゲーラの指が、横に動いた。
「こっちもオススメだぜ」
「バニラシェイクじゃん」
「だが、腹持ちはいいぞ」
 それより、とメイスが私のジュースを指差す。腹持ちの問題じゃないんだよなぁ。妥協案として、今度から野菜ジュースでも飲んでみよう。そう思いながら、ジャラジャラの氷にストローを突き刺した。やっぱり薄い。リオが食べ終えるまで、ハンバーガー店で寛いだ。


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