クリームディップ(メイス)

「おい。がっつきすぎだ」
 シュークリームを食べるななしに頬を伸ばす。そこに付いたクリームを指で拭えば、ペロリと自分で食べた。メイスが、である。『レディに対して、なんてことを』と覚えたての言葉を引っ込める。ななしがキョトンとすれば、メイスが食べ差しのシュークリームを指差した。ななしの視線が、そこへ向かう。
「食わないのか」
「た、食べるよ」
「ならいいんだが」
 そういって倒した上半身を戻す。手元から直接食べようとしたのか、メイスの影がななしから引いた。その行動に疑心暗鬼しつつ、ななしはもう一口食べる。柔らかいシュー生地が口の中に落ち、甘さを強く伝える。だが、メインはクリームだ。カスタードクリームと生クリームのコラボレーションが、ペロリと胃の中に落ちる。半分ほど食べても、まだ胃袋に余裕がある。ペロリと自分で指を舐める頃には、シュークリームを一個ほど完食していた。
 冷蔵庫にまだ残りはある。それを隠し、メイスは尋ねる。
「なにか飲むか? ミルクでもいいか」
「コーヒーがいい。甘いものを食べたから、苦いものがほしいかも」
「そうか。変わってるな。ズッキーニはあるぞ。食べるか?」
「お菓子に合うとでも思ったの?」
「そういうディップはある」
 と伝えればななしが苦い顔をした。信じられない、といわんばかりである。その疑いの眼差しに「試してみるか?」とメイスが問いかける。ななしは「いい」と答えた。
「どうせなら、サワークリームをディップにした方が美味しい」
「同感だ。サワークリームとオニオンの組み合わせが上々だな」
「それ、お酒のオツマミじゃん」
 そのツッコミに、メイスは胸を張った。
「当たり前だろう?」
 と口に出した自信に、ななしは呆れた素振りを見せた。


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