村での出来事(本編前)

 マッドバーニッシュも暇じゃない。村に関しては、問題が起こらない限り手放しで済む。けれど村の治安とか外への警戒とかは、そうじゃない。新しく入った人には、ちゃんと力の使い方を教える。そうでなくても力の使い方を知りたい人にも、教える。それと交替で見回りをしたり、村の食料や備品の相談とか色々。あとはバーニッシュの作戦会議とか、そんな大事なところ。
 次は、なんの用事があったっけ。思い出せない。暇なときは、なにをしてただろう。寝ていたっけ? それか、村の見回りでも。そう考えたら、ゲーラとメイスがきた。私の名前を呼んでいる。
「ななし、そっちの具合はどうだ?」
「使えそうなのはいるか? あとで報告に来い」
「わかった」
 どうやらメンバーチェンジの相談があるらしい。一応、彼らの得意不得意は頭に入れた。彼らに大まかな使い方のまとめを教える。「あとは感情と炎のコントロールをシンクロさせるよう、気を付けるだけ」それを締めの言葉にして、解散をした。今日の教室は終わり。私もあとで、村の人たちから暮らしについての知恵袋を教えてもらおう。
 いつもの場所に向かう。ボスはいない。昔から顔馴染みとなるメンバーもいない。ゲーラとメイスだけだった。
「他のみんなは?」
「野暮用。しばらくしたら、来るだろうよ」
「こっちは早起き組というわけだ」
「早く起きたっけ?」
「つまんねぇこといってんじゃねぇぞ」
「言葉の綾ってヤツだ。まぁ、色々と準備ってものがあるのさ」
「ふぅん」
 なんの準備かは知らないけど、そういうことなんだろう。ゲーラとメイスが、ドラム缶に顔を戻した。近寄ると、地図が広げられている。しかもフリーズフォースとか、どこかの基地のものじゃない。私たちバーニッシュの村だ。簡単な見取り図と目印があるから、わかる。
「この辺りの補強とか、した方が良さそうだよな?」
「だが大切な光源だぞ? 下手に塞ぐことはできん」
「じゃぁ、ガラスで補強するとかは?」
「反射光でバレちまうだろ」
「割れた破片も危ないからな」
「難しい」
 捨てられた高架に住む以上、どうしようもないような気がする。「とりあえず、ここにも人員を当てた方がいいよな」とゲーラがいう。メイスがそれに「できたらな」と返す。
「そこまで登れる人間、いるか?」
「攀じ登るしか、ねぇだろうなぁ」
「ジャンプや飛んで行けないの?」
「ボスくれぇだろ」
「お前も、やろうと思えばできるだろうな」
 そう返されるけど、やろうとしても少し疲れる。「梯子があったらいいかな」と提案すると「そうだな」と返される。「廃材を使えば、炎を使えない人間でも登ることができるだろう」とメイスが口にした。
「でも、落ちたら死んじゃうんじゃ?」
「あっ」
「それは力のないバーニッシュにも、似たようなことがいえる。要は安全第一だ」
「そう」
「で、メンバーの割振りについてなんだが。ななし、今日見た感じはどんなだった?」
「あー、えーっと」
 とりあえず言葉を捻り出す。彼らの特徴を踏まえて、どうにか伝えることができた。彼らの長所と短所を聞いて、二人が頷く。
「っつーと、この辺りが良さそうか」
「だな。あとは負担を減らすために、交替を増やすか」
「そうしようぜ。調達の人員も増やしてぇな」
「賛成だ。活動範囲も広がる」
「どちらかといえば、持ち帰る量が増える?」
 それでも人手があって足りないことはない。色々と考える。考え込んでいると、ゲーラとメイスが話を進めた。
「こんな感じでいいか。どう思うよ?」
「問題ない。ボスには、こんな感じで伝えておくか」
「そうしようぜ」
「ところで、ボスって?」
「もうすぐで来ンだろ」
 そうゲーラが頷いた。


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