呆れるボス

 ボスはダウンジャケットで、メイスはシュッとコートとカーディガンとフードの良いとこどりをしたような感じのもの、ゲーラはダッフルコートで私はモッズコートだ。訂正すると、私がゲーラのを借りたような感じだ。ギリギリ私とボスはサイズが合えば互いのアイテムを交換できるけど、ゲーラとメイスは違う。ほぼ下着以外のアイテムを交換できる。ので流行りのオーバーサイズのコーデができるというわけだ。
「でも、さぶっ!」
「そりゃぁな。もう冬真っ盛りだからな」
「しかも身の丈に合わないサイズ。そりゃぁ隙間から風が吹き込むだろ」
「大変だな、ななし。ちゃんと首、温かくした方がいいぞ」
「うん。ずびっ」
「こりゃぁバチが当たったな、バチが。他人様のモンを取るからだ」
「天罰だな。ふっ」
 ずび、ぶえっくし! とそれぞれ寒さに負けた音が聞こえる。メイスは鼻を啜ったし、ゲーラに至っては盛大なクシャミをした。ついでにそれぞれ鼻が赤い。
「適者生存の世界。生き抜くためだったら盗みも、へっくしょん!」
「盗みはダメだぞ、ななし。犯罪だって犯しちゃダメだ。僕たちはもう、一般的な市民の立場にある」
「はい。ゲーラとメイスの分だけにしとくね。ずびっ」
「おい」
「俺たちからも盗むな! リオ、あまりコイツを甘やかすな。調子に乗る」
「仕舞いにゃぁ、お前のも勝手に借りてくぞ、コイツ」
「そこまではしないよ。ゲーラとメイスはちょっと物が一つ無くなったくらいでも、うん。お互いに借りれるし」
「いきなりなくなるのが困るんだよ!」
「その日着ていこうとしたコーデもできなくなるしな」
「それについてはゴメン」
「借りパクしたことについては謝らないのか?」
「ゲーラもメイスもしてるから、謝らない」
「んだよ。ゲームと本借りたくらいで怒るなよ」
「そうだぞ、ちゃんと返してるじゃないか。CDとかも」
「なるほど。方向性の違いってヤツだな」
「誰かにとって大切なものは、誰かにとって大切なものなんです」
「おい。いってること同じ意味だろ」
「なにをいっているんだ、ななし」
「多分二人が気付かないと一生気付かないこと」
「はぁ?」
 余計なところでハモらないでほしい。隣を見ると、リオが肩を竦めて溜息を吐いていた。


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