欲望と道化のアンバランス

 ふわふわと風船が空に浮かぶ。最初は見えてたのに、どんどん遠ざかった。今ではもう見えない。ボーッと、クッション代わりになったゴミ袋の山の上で、空を眺める。とても臭い。あとでシャワー浴びなきゃ。モゾリと起き上がると、息を切らした二人がやってきた。「生きてるよな!?」「生きてる!」とそれぞれ切羽詰まった顔で叫んでる。思わず、自分の顔を触ってみた。透けない。ちゃんと生きているようだ。
「いきてる」
「ったりめぇだろ!! 馬鹿野郎!」
「だから、あれほどやめておけといっただろうが!!」
「うっ」
 怖い。すごい剣幕だ。思わずたじろいでしまう。そうっと後ろへ下がると、ゴミ袋の山から落ちそうになった。思わず掴むところを探す。宙を切る前に、ゲーラが私の肘を掴んだ。そのまま腕を引っ張る。
「ったく、肝を冷やすんじゃねぇよ。クソッ」
「あの高さから落ちたんだ。念のため、精密検査は受けるぞ」
「そんなに?」
「あぁ。頭に異常があったら困るだろう?」
「背骨も折れたりしたら、取り返しが付かねぇからな。立てるか?」
「立てるよ」
「なんなら、お姫様抱っこで運ぶこともできるが?」
「いらない。いってて」
 茶化したようにいうものだから断ったけど、やはり痛い。起き上がったときの痛さで、捻挫とかの不安はあった。「歩けるのかよ」とゲーラが不審そうにいうけど「歩ける」と返す。そうしたらメイスが口を出した。
「本当に運べるぞ? 担架を作って、ゲーラとな」
「今走りゃぁ、キットを取りに行けるか」
「いいよ。資材が勿体ない。片付けも面倒だし」
「だが、練習にはちょうどいいだろう?」
「予行練習で、まさかねぇ」
「うるさい」
 こっちだって、まさか命綱を握る金具の部分が外れるとは思わなかった。ちゃんとパーツも手順も確認して、不備はなかったというのに。路地裏から出てくと、リオとバーニングレスキューの皆が不安そうな顔で駆けつけてくる。各々大丈夫かというけど、大丈夫とだけ返しておいた。ただ隊長だけは、このあと病院に行けといってきた。診察にかかる費用はウチで持つからと。ふくりこうせーに手厚い。(この人たちの可能性は、少なそう)だとしたら、外部の人間とかの可能性になりそう。未だにバーニッシュへ対する当たりはキツイ。『バーニングレスキュー第三部隊所属』の肩書きがあっても、だ。
 とりあえず車に乗せられて、病院へ連れて行かれることになった。


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