日も厄災も君の中

「ななし! また僕のものを勝手に食べたな!?」
「そうはいったって。賞味期限が近かったし、代わりに同じのを買ったじゃない」
「同じじゃない! その日に買ったロマンを味わいたかったんだ!!」
 プクッと頬を膨らませる。怒りん坊だなぁ、昔と大違いだ。と、バーニッシュだった頃を思い出す。あんなにキリッとしてたのに。今じゃ駄々っ子少年と変わりない。(私も、人のこといえないけど)「ななしの馬鹿野郎」とクッションに顔を埋めるリオに、どう対応すればいいかわからない。
「えっと、ごめんね?」
「馬鹿」
「買ったけど、同じのがあったから。だからね?」
「ななしの馬鹿野郎。僕は、あのときあの瞬間に買ったのが、ほしかったんだぞ?」
 そういわれれば、返す言葉もない。グッと飲み込む。「代わりになにすればいい?」と尋ねると、ジロリとリオが睨み返した。目に涙を溜めている。よっぽどご立腹だったのらしい。
「ななしも、僕と同じ目に遭えばいい」
「だからごめんって。じゃあ、代わりになにがほしい?」
「それじゃぁ不公平だ。偶発的でないと、同じ目にならないだろう?」
「じゃぁ、どうしろと? すぐに解決できるのなんて」
 それしかない。そういおうとしたら、グッと襟首を掴まれた。引っ張られて、額を突き合わされる。ゴツンと鈍い音がした。目を開ければ、怒りに目を潤ませている目があった。やばいな、本当に怒ってる。
「ないだろうな。だったら」
 癇癪持ちの子どもが目を吊り上げて、口を開ける。鼻が擦れ合ったら、プクッとまた頬を膨らませた。
「ったく、ななしはいつもこれだ」
 一人で拗ねて、勝手に解放する。掴まれた襟首を緩めて、首元を直した。リオはまだ、不貞腐れている。
「だから、ごめんって」
「もういい」
 どうやって機嫌を直そう。そう考えてる内に、リオはソファを占拠して寝てしまった。


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