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 ぱちりと目が合った。ボスの瞳の中には星が散らばっており、とても綺麗だった。どの満天の星空よりも、とても。
 そう思ったら、グッと肩を強く引かれた。それも後ろにだ。
「どうした?」
「いや、なんか変なモン食ったらしいっす」
「いつものことですので」
「なっ!? 違うわい!!」
 思わず下手な言葉でツッコんでしまった。不慣れな単語で喋った私に対して、メイスが不安そうな目を向ける。「大丈夫か?」なんて。そもそも二人が変なことをいったからに決まってるでしょーが!! 責任転嫁をぶつける。
「拾い食いなんてしてないし! したとしても毒性のものを食べないように気を付けてるもん!!」
「食ったのか」
「食ったんだな?」
「だから、変なものは食べてないんだって! たまたま」
 畳みかけるように意見をぶつけていると、後ろから視線が刺さる。背中に、ジッと凝視するような視線が。うん、刺さる。恐る恐る後ろへ首を回すと、真剣な目をしたボスがいた。
「そうか、うん。道端に生えたものを取るときでも、ちゃんと食べれる野草かどうかは区別するんだぞ」
「ボス!? いえ、確かに食糧問題は大事ですが、って。そうじゃなくて。私はこの二人の言いがかりについて、いってるんです」
「ゲーラとメイスのか」
「えぇ」
「じゃぁ、事実でないなら謝れ。ゲーラ、メイス」
「うんにゃ。そいつぁできやせんね、ボス」
「えぇ。俺たちは真実をいっているので」
「ほう。では、その根拠はなんだ」
「コイツ、この前木の根を齧ってやした」
「腹を壊すだけの産物をなぜ食うのか、俺には理解できませんね」
「お、お腹になにかを入れてただけじゃない!! だ、大丈夫ですからね!? ボス!」
 青ざめるボスに必死に説得をかける。
「どうせ我々の炎の糧となるわけですし、お腹に支障はありません!!」
「それ、なんか悪役みたいな台詞だな?」
「オメー、それ絶対ぇ外でいうなよ?」
「俺たちは清く正しく、バーニッシュだ。マッドバーニッシュの顔に泥を塗るような真似はするなよ?」
「どうしてこう、一斉に私が宥められる形になるの!? もうやだ! ボスの瞳が綺麗だと思っただけなのに!!」
「えっ、僕のか?」
 自分が話題の中心になるとは思わなかったボスが、思わず驚いたような声を上げる。
「そこまで綺麗だと思ったことは、ない」
「いえ、滅茶苦茶綺麗ですぜ。ボス」
「えぇ。ボスのアメジストのように輝く目はとても綺麗だと、俺たちは自負しております」
「お前たち……。なんなんだ、その。少し居心地が悪く感じるぞ」
「すいやせん! ボスッ!!」
「以後気を付けます!」
「いや、別に気を付けるようなことでもないだろ……。それより」
 スッと私に向き直ったボスが真剣な顔をする。いったい、なんなのか。そう思いながらボスの行動を見ていたら、私が食べ残した食糧を手に取った。
「お前は、ちゃんと出されたものは、最後まで食べることだ」
「むぐ」
 無理矢理食べ物を突っ込まれる。モグモグと口を動かし、どうにか腹に落とす。その後ろで、ゲーラとメイスが毛の逆立った猫みたいに驚いた顔をしていたけど、それには私も同じ気持ちだった。


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