極東のじゃんくふーど

 他の国の事情はわからないが、極東の国のお菓子というものは、とても手が込んでいる。入手先についてはガロ・ティモスから聞いた。あの青年はこういうときにとても役に立つ。
 向こうで人気の『ちぃずかったるび』とやらを食べながら思う。私が大量のオヤツを買いこんだのを聞きつけてか、ゲーラとメイスが部屋に入ってきたけど。
「おっ、うめぇな。これ」
「新しい味だ」
「それ、私が買ったんだからね? 一口は残してよ」
「わぁってるって」
「しかしボスに渡す前に、サンプルは多く取っておいた方がいいだろう?」
「それはそうだけど」
 いくら極東の島国が食品の安全基準が高いからとはいえ、下手なものは渡せない。ゴムみたいに不味い味のものをボスに渡すなんて、論外だ。幸いなことにサルミアッキやリコリスみたいなのには当たってないけど。ゲーラの開けた小さなドーナツに手を伸ばす。親指大で、穴が小さい。その分生地がしっかりと膨らんでいて、しっとりとしている。ザラザラの砂糖が舌を触り、少し力を入れて噛めばパサついた味がする。けど、ドーナツだ。個人的にドーナツ屋のドーナツの方が好きだ。
 メイスが私の開けたスティック状のお菓子に手を伸ばす。
「んっ。中々いけるな」
「そう」
「あ? どんな味だよ」
 好奇心に煽られたゲーラが一本抓む。モグモグと口を動かしてゴクンと飲み込もうとしたら「かっら!」と感想を言い出した。
「辛ぇな、これ! 喉の方にガツンと辛さがきたぜ!!」
「そうか?」
「ないけど」
「ばっか! お前らの当たり具合が悪いんだろ!! 俺が食ったのには……、あ? ねぇぞ……」
「ゲーラの食べたのにだけ固まってたんだよ」
「基本、口の中に辛さが残るだけだぞ。極小の」
「いやいや、んなわけねぇだろ。確かに食ったぞ、俺は」
「だからゲーラの食べたのだけだって。よかったね。百万分の一だ」
「そうかぁ?」
「そうだよ。ラッキーボーイ、ラッキーボーイ」
「はぁ? んなわけねぇだろ」
「少なくとも、宝くじを当てるのはまだだな」
「そこまでの幸運をいってるわけじゃないよ。天使じゃあるまいし」
 そう適当に会話を流しながら、買ったジュースをゴクゴク飲んだ。


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