膝枕がほしい

「お前ってさ」
「なに」
「ボスにだけは膝枕、させんだな」
 不満げなゲーラの言葉に顔を上げる。頬杖をついて、ムスッとした顔でこちらを見ている。「なに」ともう一度いってみるけど、いつもの「別に」との言葉は出てこない。ジッと、こちらを見るだけだ。
「別に必要なんてないじゃない」
 遠回しに「やる必要はないだろ」と伝えると、ギュムッとゲーラの眉間が歪んだ。面白いなぁ。そう思いながら吊り上がった眉毛を見る。
「クッションもあるし」
 文句いいたそうに開いたゲーラの口が、声を出さないまま固まる。
「枕もある。膝枕よりもマシなのはあるじゃない」
「そ、ういう問題じゃねぇ」
「床はじゃりじゃりしてないし、土も付かない」
「地べたと比較していってるわけじゃねーんだぞ」
「シーツも柔らかい」
 全身を包むベッドを持ちだしたら、ゲーラの肩がピクンと跳ねた。
「膝枕よりも寝心地の良いもの、もっとあるじゃない」
「……気分的なモンとか、あんだろーが」
「そう。じゃぁ、ゆっくり眠れる音楽とかでもかける?」
「んなのでもねーよ。っつか、あんのかよ」
「あるよ」
 近くのレコード店を覗いたり、小さな機械を操作するだけでも色々と出てくる。支給されたスマートフォンを取り、ピックアップした音楽を流す。流そうと再生のボタンを押そうとしたら、ゲーラに止められた。手首を掴まれる。
「なに」
「だから、そーいう気分じゃねぇって」
「そーいう気分って、なに」
 顔を上げると掻っ攫うようにキスをされる。一瞬、注意しないとわからないくらいだ。それから手をギュッと握られて、力をかけられる。
「……こういう気分、っていわれても。困る」
 肉体言語で語られたことを声で返事をしたら、ゲーラが私の方へ体を傾けてくる。
「『そーいう気分』といわれたら、私も【そーいう気分】じゃない」
「まどろっこしいじゃねぇか。ハッキリいえよ」
「ゲーラがいうなら」
「ヤりてぇ」
「そういうのじゃなくて」
「ムラムラすんだよ」
 お前といると、と。押し倒しながらいわれても。覆い被さったゲーラを床の上で見ながらそう思った。


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