火山近くでの野宿

 火山の調査から戻ってきたボス曰く「ここはちょうどいいな」とのことだった。
 なにが「ちょうどいい」のかは私たちにはわからない。けれど我々バーニッシュの街を作ると宣言したボスのことだ。きっと、なにかしらの考えがあるのだろう。
「では、この辺りを拠点にして?」
「いや、この周辺で探すんだ」
「へぇ、なるほど。いや、わかったぜ」
「次は家探しというわけか……」
「でも、なんでこの辺りに決めたんです?」
 リオ、と尋ねれば難しい顔で考えられる。それから数秒、数十秒。たっぷりと考え込んでからいった。
「後で話す」
 話は後に回された。まぁ、色々とあるんだろう。そう考えてたらゲーラに腹を突かれた。肘で。
「あまりリーダーを困らすんじゃねぇぞ」
「俺に聞けば済む話だろ」
「二人が気付かなかったことをリオが気付いたのに?」
 そう返せば、ゲーラとメイスは黙った。ムグ、と返す言葉が見つからないようだ。
「そう焦るな。必要とあればお前たちも尋ねればいい」
「じゃぁ」
「どうして火山の方を調査したんだ」
 それ、私が聞きたかったことに被るじゃん。そう思いながらも、リオの発言を待つ。
「火山の熱さを見ていた」
「は?」
「ヤツらは、フリーズフォースを始めとしたプロメポリスの連中は、機械を使って僕たちの体を測る。ちょうど、三十年前のように」
 三十年前。
「えーっと? そいつぁ……」
「俺たち、まだ生まれてもいないよな」
「でも話なら聞いたことがある」
 申し訳ない、私の方がそういう話題に触れるのが多いのだ。キョトンとした顔で見るゲーラとメイスに、視線を投げ返す。
「なんか、飛行機に乗る際のゲート……。あぁいうので、断定するんだって聞いた」
「飛行機ぃ?」
「金属探知機みたいなヤツか」
「うん」
 とはいえ、結構古い知識だけど。
「港とか結構古いところには設置してないから、簡単に潜り込めるけど」
「へぇ」
「したことあるのか」
「……でも、大規模なのはありませんよね?」
「あぁ。漫画とかでも見たことがあるだろう? スカウターってやつだ」
(どうだろう)
 例え世界的に有名な漫画であったとしても、世界大炎上が起きたあとだ。残ったとしても出版はされ、普通の人間の元に届くだろう。けれども早い時期にバーニッシュになってしまえば、それを見ることも叶わない。
 悩んでいると、ゲーラもメイスも難しそうな顔をしていた。
「とにかく、小型で瞬時に判断できると?」
「そういうことだ」
「なるほど」
「でも」
 ウンウンと唸るゲーラの横でメイスがいう。
「なんだってそんなことが俺たちと関係あるんだ。あるとすれば、俺たちと火山は燃えているということくらいしかない」
「それだ」
 リオは即座に答えた。
「ヤツらは周囲の温度、もしくはそこの温度差を見て、僕たちを普通の人間と識別している可能性がある」
「しきべつ」
「判別している、と。色分けみたいなものか」
「クソッ! アイツら馬鹿にしやがって!」
「だから、逆に木を隠すなら森の中、森を隠すなら木の中ってヤツだ」
「はぁ」
「カモフラージュ、ということか?」
「それに近い」
 メイスが惜しかったで賞を取った。
「正確にいえば、火山の熱で僕たちの存在を見えなくする、だ」
「はぁ」
「だから火山の活動が活発であればあるほど、大量のバーニッシュがいても見えなくなる。あとは、空からわからない場所に街を作ればいいだけだ」
「そら」
「あぁ。徒歩や陸を使うことなど、効率的なヤツらを考えるとあり得ない。可能性は低いと見ていいだろう」
「なるほど。敵の出方を逆手に取る、と」
「裏を掻くってヤツだな!?」
「あぁ。だから空からでは一見わからないところを使う。それに」
 リオがとんとんと地面を叩く。
「陸から来た場合にも、そこからわからない場所が一番望ましい」
「っつーと……」
「地下かな?」
「それは地盤が崩れるとかで却下されたはずだ」
「その点は追々考える」
「けど、詳細に調べられたら終わりなのでは?」
「例え話をしよう」
 リオが地面の土を一握りする。
「ここに、一握りの土や砂があるな?」
「はぁ」
「へぇ」
「土、だな。ただの」
「その通りだ。もし、この土をもう一度地面に戻したら」
 ボスの手から土が零れ落ちる。
「もう一度、この手にあった砂を探し出せるか?」
 ゲーラと一緒にリオの手を指す。リオの手袋には、土があった汚れがついていた。
「そうじゃない」
「地面に戻した砂利、だな。見ての通り、探し出すことも見分けることも難しい」
「詳しく見てないなら尚更だ。空の上から探し出すとなれば、余程高性能なものを使わなければならないだろう」
「でも、向こうは渋る」
「俺たちを探そうなど、片手間で足りると思っている」
「要するになんだ!?」
「この近くで姿を隠せば、ヤツらに見つかる可能性は低いということだ」
「じゃぁ、どこに街を作るんでぇ!?」
「それを今から考えるんだ」
「というか、それが今の話題」
「落ち着け、ゲーラ」
「んだよ! これだと俺ばっかりがわかってねぇみたいじゃねぇか!!」
 コンチクショゥ! と叫んでゲーラは地団太を踏んだ。もとい全身発火した。


<< top >>
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -