初人工呼吸

 ある日集落に戻ると、ゲーラとメイスが負傷して戻ってきた。ゲーラや他のメンバーは軽傷であるものの、メイスは重傷だ。これを見たボスはスゥっと息を吸って、口に炎を含ませたかと思うと、メイスに口付けた。これにはビックリ。するとメイスの体から薄い緑色の光が出て、怪我がたちまちに治った。
(ロウソクの火、みたいなものか)
 ボスが「これで安静にしていれば大丈夫だ」というので、私はメイスの横に膝をついた。
「ボス」
「なんだ」
「つまり、もう少し与えれば、完全復活ってことですよね?」
「そういうことにはなるが……。それがどうした?」
「こう、やればいいってことですかね」
「は」
 プクッと口の中に体内で燃えた炎を含ませ、驚くメイスの顔を両手で挟む。そのまま、口を付ける。ピッタリと唇を合わせたまま、口に入れた炎をメイスの体に移した。また、ホワッと光る。口の中に残る炎が全部メイスに移ったと見て、顔を離した。
 メイスの顔は驚いている。そこまでギョッとした顔をすることもないのに……。そう思ったら、後ろで怒鳴る声が聞こえた。
「なっ、なにやってんだ! 貴様ァ!!」
 ゲーラだ。ゲーラがマジギレした。そうはいっても、必要なことじゃないか。
「なに? 必要ならゲーラも習ったら?」
「そっ、そういうことじゃねぇ!」
「なんだ? お前は軽傷だから休めば治るだろ」
「そ、そういうことじゃなくてですね、ボスッ……!! 俺がいいたいのは、そうだ!」
 ポンッとゲーラが思いついたようにいう。
「どうしてメイスだけが、こんなに、手厚いかってことっすよ!」
「なんだ? どこが不満なんだ」
「ふっ、不満とかじゃなくてですね、その……。いやいや、ななしがする必要もなかったじゃないっすか!!」
「はぁ? そんなことをいわれてもな。僕には止める暇がなかった」
「ごめん。必要なら後でするから」
「はっ!?」
「やめておけ。それには結構体力を使うんだ。疲れているときはやめた方がいい」
「でもボス」
「……いや、俺はもう大丈夫だ。大丈夫だから、心配はするな」
「でも」
 今まで黙りこくったメイスが、口を開く。私の肩を押すなり、立ち上がった。フラフラとゲーラに近付いて、その肩に手を置いて一言。
「すまん」
 と謝った。えっ、なにそれ。どういうこと?
「そんなに嫌がられても。緊急時にはしょうがないじゃない。我慢してよ!」
 そう小さくなる二人に叫んだら、瞬時に振り向かれた。ゲーラは目に涙を溜めて口をへの字に曲げてるし、メイスは顔を真っ赤にして目尻を吊り上げている。なんだ、そう睨まれることでもないだろうに。
「じゃぁ、他の人らにも」
「絶対にするな!」
 今度は二人にハモられて怒鳴られた。そんなに怒られることだろうか? 二人に禁止された以上、破ると面倒事が起こるのは確実なので、やらないでおく。それにしても、本当にダメなのだろうか?
 チラリとボスを見る。ボスは呆れて「お前たちで解決しろ」といった。


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