ボスと一緒に暮らしたいゲーラとメイスと私と

 ボスが不健康な生活を送ってると聞いた。
「ので、私たちと一緒に暮らしてください。ボス」
「は?」
「大丈夫です。ちゃんと部屋は探してあります」
「ボスのお好みでどうぞ!」
「いや、なにをいってるんだ。お前たち」
 一緒に食事をしている際に同居をオススメしたけど、見事に却下された。
「だって、ボス。健康そうな生活をしていないから……」
「健康そうってなんだ、健康そうって」
「そりゃぁ、三食キチンと食べて決まった時間に寝て起きて」
「けんこーゆーりょーじ、っつーみたいなもんすよ」
「馬鹿馬鹿しい。健康優良児にならなくてもいいだろ」
「でも、ボスのような年頃には、そのような生活がいいって」
「じゃぁ、逆に聞くが。お前たちが僕のような年頃には、そういう生活をしていたのか?」
「いいえ」
「充分に食えませんでした」
「フッカフカのベッドだなんて、夢のまた夢ですぜ」
「だからこそ、ボスにはフカフカのお布団で寝てほしいし、お腹いっぱい食べてほしいんです」
「そういうことです。なので、ボス」
「俺たちと一緒に暮らしやしょうぜ」
「いや、そんなことをいわれてもな」
 頬杖を突いたゲーラの一言に、ボスは軽く引く。そんなに嫌なんだろうか? そう思いながら、パスタをフォークで絡める。
「利点はいっぱいありますよ」
「三食きちんと用意します」
「俺たちが交替でちゃんと作りやすぜ!」
「……そうだとしたら、僕もやるべきなのでは?」
「そんなことないです」
「俺たちの好意で完全にやってるので」
「ボスは出来上がるのを待っててくだせぇ!」
「それだと逆に、今のままでもよくないか? お前たちに任せっぱなしにするのは気が引ける」
「ボス……」
「そんな、俺たちに気を遣わなくても」
「同じ釜の飯を食った仲じゃぁないすか……」
「じゃぁ、僕がキッチンに立っても問題はないはずだよな?」
 それに、私たちは一斉に目を逸らした。ただ、ゲーラだけが目を泳がした。それとこれとは話が違う。その、ボスがキッチンに立つと、色々と弁償がヤバいのだ。だからボスの部屋にはヤカンしかないし、そのせいで食事が偏る。だから私たちがたまに訪れてこう、食事とかを作ったりして一緒に取っているのだけれど。
「……皆で食べるご飯は、美味しいですよ?」
「ななし。今、話を変えようとしたな?」
 鋭いボスに、ギクリと肩が跳ねた。ただ、ゲーラだけが折れた。
「もっ、申し訳ありやせん! ボスッ!! ただ、ボスが立たれると、その、金がヤベェんで! 本当、その辺は勘弁してやってくだせぇ!!」
「は?」
「俺たち三人でボスを養うにしても、その予想外の出費をされると、どうしても困るんです……」
「つまり? なんだ?」
「やるにしてもキチンとした指導の下で行ってください」
「なるほど、そういうことか」
 じゃぁ考えてみようかな、とボスはいうけれど。私たちは知っている。ボスがキッチンに立たれても、ついついボスの楽しそうな顔を前にして「じゃぁ、それでいっか」的なノリで大事故を起こしていることを。私たちがついつい事故の引き金となることを見逃していることも。
 そのことを考えると、明日がとても考えられない。頭を抱える。ボスと一緒に暮らそうとしても、私たち側で問題がいっぱいだ。


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