ざつだん

 ゲーラとメイスは入れ替わり立ち替わり、よく人の部屋にくる。今回は、二人同時にきたけど。好き勝手部屋で寛ぐ彼らを見ながら、ラグの上に座った。ゲーラはベッドを占領してるし、メイスはクッションを占領している。
「確か二人とも、シェアハウスをしてるんじゃなかったっけ」
「ルームシェアだ」
「家賃も安く済むんでな」
「いいなぁ。ボスは?」
「一等いいところに住んでるに決まってるだろうが」
「それもそうか」
 当たり前だ、と自分の中で整理しながらそう思う。バーニッシュじゃなくなって、『マッドバーニッシュ』もなくなった。正確にいえば、その罪は消えてないし、執行猶予という形と街の復興を手伝う形で、それを償っているという感じだ。でも『マッドバーニッシュ』はなくなっても、ボスへの尊敬の念は消えない。だから私たちよりもボスが良い暮らしをしていると聞けば、ホッとする。けど、あのボスのことだ。ちゃんと生活できてるのかな……。
「ちゃんと食べてればいいのだけど……」
「あー……」
「ボスのことだ。多分、きっと……、あぁ。かなり不安だな」
 メイスが頷く。やっぱり、ボスはちゃんと食べてない可能性がある。なんだって、あんなにしっかりしていても育ち盛りの男の子なのだ。組織のトップに立った人間でも、それ相応の年頃の子なのである。
「ちゃんと食べてるかなぁ」
「あぁ」
「いくらなんでもお前みたいに倒れるまで食べないとは思うが……」
「やっぱり、たくさん食べるのかな」
「この前、火消し野郎と一緒に大食いしてたぞ、ボス」
「チャレンジに成功していたぞ」
「そうだったんだ……。その場にいたの?」
「たまたまだ」
「たまたまだな」
「そっかぁ」
 被った二人の声に思うところがありながらも、テーブルに置いたクッキーに手を伸ばした。


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