今年最後の一日(消火後)

 プロメポリスの深夜過ぎ。既に時刻は日付を上回っており、今年最後の日となっていた。シンと静かな通りを、二台のバイクが走る。雪が微かに降り積もろうとも、走り屋には関係ない。きっかりと着込んで防寒対策をし、少ししたところで停まる。ひょこっとななしが顔を出した。
「どこも開いてない」
「そりゃそうだろ。年末だぜ? 店は開いてねぇよ」
「開いてるとしたらバーくらいなものだろう。テイクアウトはできないがな」
「駄目じゃん」
「お前が言い出したんだろ。年末過ごすための買い出しをするって」
「まぁ、自宅でのんびりと過ごしたい気分はわかるが」
 だからって、今買い出しに向かうのは無謀だぞ。と呟くメイスに「だって二人に邪魔されたから」とななしが返す。「そりゃわるかったな」とゲーラが反した。
「けど、生きてる以上仕方ねぇだろ。どうしたって、湧いて出てくるってヤツがなぁ」
「へんたい」
「そもそも、ご無沙汰だったんだ。ここまで長く我慢できたのを褒めてもらいたいくらいだ」
「そのせいで今日一日動けなかった」
「昨日だろ、昨日」
「もう三十一日になったからな。あと二十三時間で花火が上がるぞ」
「それを部屋から見たかったのに」
「もう明日起きてから買いに行きゃいいンじゃねぇのか。開いてる店くらい、あンだろ」
「だな。クリスマスと違って休みにする店は少ない」
「おもち食べたい」
「あ? なんだ、そりゃ」
「極東の島国の食べ物か? 生憎だが、輸入品を買いに行ける余裕はないぞ」
「アジアン」
「ん? あー、アジア人の食うものを中心に扱う店に行きゃ、ワンチャン売ってるってか」
「そうそう」
「それこそ昼間に行かないとないだろう。残っているかどうかはわからんがな」
「残ってほしい」
「朝早く起きれたらな」
「というより、いやいい。近くにあるといいな」
「うん」
 そういって、ななしがゲーラの腰にギュッと捕まる。今回はゲーラの後ろに乗っての移動だった。提案者が諦めたことを見て、エンジンを温め始める。一年の最後に食べる餅は、味噌やカツオと一緒である。否、元旦の始めに食べるものか。エンジンが温まったことを見て、帰路に着いた。
 ビュンッとバイクのライトが軌跡を作る。マッドバーニッシュの走り屋だろうと、明日は仕事があった。


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