新作登場(消火後)

「確かに、良いといったが。まさかこうなるとは」
 リオが頭を抱える。どうやら、なにかを見てのことらしい。ゲーラやメイス同様、リオのスマホの画面を覗く。すると、なにかのぬいぐるみだ。ちょうど、リオのバーニッシュアーマーに似てる。
「これ」
「いわなくてもわかってる」
「俺たちの分もあるようだぜ。メイス」
「あぁ。奇特だな。ボスだけでも充分だろうに」
「お前たちも巻き込まれろ。それにしても、まさかこれとは」
「嫌なの?」
「予想の斜め上で、反応に困っている」
 はぁ、とリオが溜息を吐く。ゲーラが勝手に指で操作したのを見れば、ちゃんとゲーラとメイスのバーニッシュアーマーもある。それらはぬいぐるみの形となっていて、ちゃんと角が丸い。実物みたいに角が尖っていなかった。「細部まで、よくできているな」「どこまで再現してンだよ。これ」メイスは感心しているし、ゲーラは感心を超えて呆れてもいる。どうやら、本人の意図した通りになってるようだ。「に、しても」チラッとゲーラが私を見てくる。
「ななしの分は、ねぇな」
「当たり前だろう。バーニッシュでなくなった今、参考になるのは映像のみだ」
「確かに、僕たちは映像に映っていたからな。ゲーラとメイスの分は、充分にあっただろう。僕の分は、隠し撮りか」
「今探すと、一般視聴者の映像があるもんね」
「んで、それをメディアが買い叩いて地上波に乗せると」
「リーズナブルだな。皮肉の意味でいったが」
「わぁってるよ」
「確かに協力するといったが、まさかこれとは。バーニッシュへの差別がなくなるのなら、いいのか?」
「わかんない。けど」
「少なくとも、俺たちマッドバーニッシュのイメージがなぁ」
「ここまで愛されキャラのマスコットとして、作り上げられるとな」
「マッドバーニッシュのカッコイイイメージが崩れてしまう」
「そこ?」
「ボス。俺たちマッドバーニッシュが街を襲う恐ろしい集団だったっての、忘れてますぜ?」
「今では走り屋みたいなのになってますが」
「いいだろ! 他人には迷惑をかけていないし!! まぁ、子どもたちが喜ぶから、いいか?」
「数が足りないですぜ。買った方がいいっすよ」
「とはいえ、俺たちの分があってもな。取り合いを視野に入れるか?」
「テディベアがほしい」
「あぁ。熊のぬいぐるみは安心するもんな。まぁ、別に買わなくていいか。うん」
「ボスの分を入れるとすると、二か?」
「一セットが二だな」
「どういうこと?」
「お前たちの分を入れると、三だろ」
「うんにゃ」
「ボスの方に一セットと、ボスのぬいぐるみの分。俺とゲーラにそれぞれのぬいぐるみですよ」
「そんな馬鹿なことあるか。だったら、僕のところにも僕の分だけだろう」
「いやいや。ボスの貢ぎ、贈り物が多いんで」
「ボスの貢ぎ、贈り物の方が多いのは常識ですよ」
「おい。今『貢ぎ物』といおうとしたな?」
「あ、またボスへのお手紙」
 コトン、と玄関の細長い口から郵便物が中へ落ちる。(犬や猫がいたら、どうなるんだろう)動画のように、取りに行ってくれるとか? それとも、様子を見るだけ? そう思いながら、知らない名前を眺めた。


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