休みの日(消火後)

 全体を確認したときに気付く。「あっ」リモコンを操作する手を思わず止めた。「シーズン二と三がない」「なに!?」「マジかよ」珍しくメイスが真っ先に反応した。タブレットはテレビと繋がっており、大画面で配信を見れる。今回は古い時代から新しい時代にまで続くアニメだ。極東の島国で生まれた娯楽アニメであり、怪盗ルパンをモデルにしたものである。それをななしが今回のChill out≠ノ選び、テーブルに大量の食事が並んだ。ゲーラとメイス、ななしの三人で作ったものである。キャラメルやチーズはフライパンでポップコーンを加えて作り、ピザは注文、トルティーヤ・チップスは市販品と缶詰で和えたものだ。おかげで冷蔵庫の中は空っぽである。コーラだけは、ゲーラが急ぎで買ってきたものである。「やっぱ、コイツがないとな」「そうなの?」「知らん。げっぷはするなよ」「しねぇよ。だとしたら、メイスもだぜ?」「適度に飲むさ」スプライトは最初からあったもので、ミネラルウォーターはその倍だ。ななしは水を飲む。その折に今の事件が起こった。
 抜けたシーズンを見て、ゲーラは悩む。
「チッ! これで一日保つかどうか」
「というか、一シーズン辺りの話が意外と少ないな。数十年くらい続いていたんだろう?」
「わかんない」
「あー、映画とかあったらしいぜ。それで間を繋いでンだろ」
「正確には時期に乱れがあるっぽい」
「なんだ、それは。あとで調べてみるか。となると、残りの時間で映画の方を見るか?」
「うーん」
「あったらな。そう簡単にねぇだろ。全部が揃ってることなんざ」
「調べてみる?」
「あとでいいだろ。クッ、全部見るつもりだったてぇのに」
「どうしてこうも抜けが存在するのか。戦略的なものか?」
「わかんない。とりあえず、一話から再生してみる?」
「そうしようぜ」
「なにが出てくるか楽しみだな」
「随分と前の話みたいだけど」
 それも、世界大炎上が始まる前だ。それより遥か前の作品が残っているとは、人間の知恵とは恐ろしい。あの大厄災の中で焼失を免れていた。ボタンやタップ一つで、作品が再生される。自分たちが生まれる前の作品を鑑賞し始めた。
 野菜スティックに手を伸ばす。ポリポリとななしがキュウリを食べ、ゲーラは辛いディップを付けたトルティーヤ・チップスを食べる。メイスは意外にも、ピザに手を着けた。昼食・夜食をテーブルにあるものだけで済ませる。
「時代的制約があるとはいえ、すごい」
「あー、まぁ、今だと無理があるって、思えちまうか?」
「だな。科学的技術の進歩が今ではない分、実現ができたということなのだろう。頭へのトンカチ含めて」
「死んじゃう?」
「普通に殺人未遂だろ」
「当時はギャグで済ませれたんだろうな」
「バッドマンの、アレ?」
「寧ろタートルズの方が面白いぜ。亀が化学薬品でなっちまうやつ」
「社会派・政治的な色合いが強い分、こういうものだと楽に観れるな」
「いろいろな、なんとか」
「おい。まぁ、そういわれると、こっちの方が楽に観れるけどよ」
「だろう? まぁ、破裂した気球でここまでできるかとなると」
「微妙だろ。絶対ぇすぐに墜落するぞ。これ」
「夢がない」
「現実的に考えるとなぁ」
「だからこそ、なにも考えなくて済む作品の人気が高まるわけだ」
「へぇ」
「完全に娯楽として楽しめりゃぁ、そうだろうな」
「おっと、ゲーラは拗ねたようだな?」
「拗ねてねぇよ!!」
「でも拗ねてた?」
「してねぇよ! チッ。確かに、良いのは認めるがなぁ」
「ククッ、まぁ色々とあるだろうよ。その時代や国柄でないと作れないこともある」
「あっ、聞き取れなかった。二人とも、うるさい」
「わぁるかったって」
「上映中は静かに、ってヤツだな」
 ななしが巻き戻す。小さく不満を垂らしたななしに、二人は素直に謝った。まだシーズン一すら完走していない。休みの日をダラダラと過ごした。


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