液体窒素のカキ氷

 とりあえずのところ、バーニングレスキュー隊としての服装が決まった。キッチリと着込まないことにした。アレンジは人それぞれである。そもそもちゃんと隊の制服を着込まない人もいるし、違うTシャツを着る人だっている。まぁ、当分の間は自由な着こなしはできないだろうけど。ちなみにボスは燃えるからという理由で、耐火素材を着るときはフリル禁止となった。
(バーニッシュのときと訳が違うし)
 とにかく普通の人間になったのだ。巨大な氷の壁を手で崩しながら、そう思う。
「お前、なにやってんだよ」
 仕事中のゲーラがいう。
「いや、カキ氷にできないかな、って。カンナとかがあれば、こう、氷を細かく削ってカキ氷みたいにできるから」
「なんだそれ」
「美味いのか?」
「シロップがあれば」
 メイスに続いてボスも食いついてきた。とはいえ、これが食べれるかどうか聞かなければいけない。
「問題は食用にできるかどうかなので、ムショに放り込まれたクレイ・フォーサイトに聞く必要がありますが」
「クレイか」
「チッ、俺は絶対ぇ行きたくねぇぞ」
「断固お断りだ」
「大丈夫だよ、元より一人で行く気だから。それに、溶けない氷の理由も気になるし」
 そういって、鞄の中に入れる。素手で触ったら皮膚を持ってかれそうだ。そう思いながら、罅の入った一点を叩く。脆くなった箇所へ重点的にキリで衝撃を与えていると、簡単に氷の壁の大部分が壊れた。
「おぉ」
「中国四千年の歴史というか、コツですね」
「流石だな」
「俺にもやらせろよ」
「ゲーラは道具を壊しそうだからやだ」
「なんだと!?」
 というかちゃんとコツがわからなさそうで無理そう。そう思いながら、復興用に使えるロボの到着を待った。それまで、私たちはほぼ体一つで街の瓦礫などを退かさなきゃいけないのだから。そういえば、ガロ青年も同じだといってたっけ。ボスをクレイ・フォーサイトから守る際に、自身のギアも溶けたのだという話らしいし。
 そして仕事が終わってから当のクレイ・フォーサイトにこの氷が食べられるかと聞いたら「胃袋が破裂するぞ」で終わった。結論をいおう、ボスの胃袋を守るためにこんなも食わせられるか。
 燃えないゴミに絶対溶けない氷を捨てて、独房を後にした。


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